
「昨日歩いた分しか、今日はランチ代を使えない」
もしそんなルールがあったら、私の昼ごはんはどうなるのだろう。
歩数と支出。どちらも毎日見ているのに、まったく別々に眺めている数字だ。Fitbitを見れば「今日、全然歩いてないな」と思い、Moneytreeを見れば「今日、ちょっと使いすぎたな」と思う。反省するタイミングは同じなのに、2つの数字はまるで無関係なままである。
だったら、無理やりつなげてしまえばいいんじゃないか。
歩けば使える。歩かなければ使えない。
ルールはこうだ。
・1歩=0.1円
・前日の歩数が、翌日の「ランチ+α(食後のコーヒーやおやつ)」に使えるお金になる
・5,000歩なら500円、8,000歩なら800円、1万歩なら1,000円
ちなみに歩数の目安は、歩幅75cm・1分100歩で計算する。1,000歩でだいたい750m、10分だ。
もっと食べたければ歩くしかないし、歩けなかった翌日は節約するしかない。運動と節約を、まとめてゲーム感覚で遊べるのでは?
……かなりいいアイデアな気がしてきた。
ただ、本当に1週間これで暮らすと、仕事の付き合いや家の予定まで巻き込んで大変なことになりそうだ。そこで今回は、5,000歩・8,000歩・1万歩の3パターンで、どんなランチになるのかをシミュレーションしてみることにした。
果たして、歩いた分だけのお金で、まともな昼ごはんは食べられるのか。
まずは5,000歩から。前日の歩数が5,000歩なら、今日使えるのは……
500円。
5,000歩は、距離にして約3.75km、時間にすると約50分。通勤や買い物で普通に動いていれば、なんとか届くくらいの量だ。
それで500円。絶妙な金額である。何も買えないほど少なくはない。でも、外食はかなり厳しい。コンビニでも、何も考えずにカゴに入れていたら一瞬で超えてしまう。
そこで、500円に収まる組み合わせを考えてみた。
・おにぎり180円×2個=360円
・お茶140円
合計は……
ピッタリ500円!

一応、ランチにはなった。おにぎり2個とお茶なら、忙しい日の昼食として普通にありそうだ。悲惨というほどでもない。
ただし、残金はきれいに0円。
食後のコーヒーも、3時のおやつもナシ。ルールにあった「ランチ+α」の「α」が、まるごと消えた。
では、あと3,000歩多く歩いていたら、昼ごはんはどこまで変わるのだろう。
次は8,000歩。予算は800円になる。
8,000歩は約6km、時間にして約80分。5,000歩の日より、30分ほど多く歩くことになる。
5,000歩と比べて増えたのは300円だけ。だが、昼ごはんにとってこの300円はかなり大きい。
たとえば、650円の弁当と150円の飲み物。
合計800円。弁当が買えた!
おにぎり2個で精いっぱいだったのが、急にちゃんとしたランチっぽくなった。
しかもこの8,000歩、ただのキリのいい数字ではない。1日何歩歩けば健康にいいのか。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人の目安として「1日約8,000歩以上」に相当する身体活動を挙げている。
つまり、こういうことだ。
国の目安を歩くと、弁当が買える。
ちなみに、同じく厚労省の「国民健康・栄養調査」によると、20歳以上の1日の平均歩数は男性6,793歩、女性5,832歩。このルールに当てはめると、予算は男性約680円、女性約580円になる。
男性の平均なら弁当は買えるが、飲み物はガマン。女性の平均だと、弁当にすら届かない。……平均的に歩いているだけでは、ちょっと物足りないのである。
逆に、300円を歩数に戻すと3,000歩。距離にして約2.25km、時間にすると約30分だ。
ランチのグレードアップ代、3,000歩(約30分)。
おにぎりを弁当に変えるために、30分歩く。そう考えると結構歩いている。では、さらに2,000歩足して1万歩まで行けばどうなる?
ついに1万歩。予算は1,000円である。
1万歩は約7.5km、時間にすると約1時間40分。8,000歩からの上乗せは2,000歩、約20分だ。2,000歩は、ちょうど1駅分歩いたくらいの量(1駅1.5km=約2,000歩)になる。
ここまでくると、500円のときとは景色がまるで違う。店で850円のランチを食べて、食後に150円のコーヒーを買う。
850円+150円=1,000円。ランチ+食後のコーヒーまでいけた!
5,000歩ではおにぎり2個とお茶。8,000歩では弁当と飲み物。そして1万歩まで歩けば、850円のランチのあと、残った150円でコーヒーまで飲める。ようやく「α」までたどり着いた。
ただし、これでぴったり使い切り。
……結局どの歩数でも、残金は0円である。

こうして並べると、5,000歩の差でランチの中身はかなり変わる。そして計算しているうちに、このゲームの妙な副作用に気づいてしまった。値段を見ると、先に歩数が浮かんでくるのだ。
150円の飲み物 → 1,500歩
300円の追加 → 3,000歩
800円のランチ → 8,000歩
家計簿で「今日は800円使った」と見るのと、「今日は8,000歩分使った」と見るのとでは、同じ金額でも重みがまるで違う。いつもの800円が、急に高く見えてくる。
そこで、歩く時間と昼ごはんの「交換レート」を並べてみた。このルールだと、10分歩くごとに100円増える計算だ。

こうして並べると、悩みどころがはっきりする。
・30分歩いて、おにぎりを弁当にするか
・さらに20分歩いて、店のランチとコーヒーにするか
・歩かずに、おにぎりで済ませるか
いちばん割がいいと感じるのは、5,000歩から8,000歩への30分だ。おにぎりが弁当と飲み物に変わるうえ、国の目安の8,000歩にも届く。一方で、食後のコーヒー1杯のために15分歩くかと言われると……ちょっと考える。
歩数と昼ごはんの、地味に真剣なトレードオフである。
このルールで予算を増やしたいなら、方法はひとつ。歩数を増やすしかない。
とはいえ、わざわざウォーキングの時間を作らなくても、歩数を増やす方法はけっこうある。
・いつもより少し遠いコンビニへ行く
・昼休みに散歩する
・一駅分歩く
・エレベーターではなく階段を使う
・近い距離なら車を使わず歩く
日常の動きを少し変えるだけで、歩数はちゃんと上乗せできる。
ただ、ここでひとつ危険な考えが浮かんだ。
「今日使いすぎても、明日歩けばいいのでは?」
たとえば、今日の予算は8,000歩分の800円。でも、どうしても1,200円のランチが食べたい。そこで足りない400円を先に使って、明日4,000歩余分に歩いて返す。
……いや、これ完全に借金!!!
しかも一度これを許すと、たぶん止まらない。月曜から金曜まで、毎日1,200円のランチで400円オーバーを続けたとすると……
400円×5日=2,000円。歩数にして2万歩の借金である。
2万歩は約15km、時間にすると約3時間20分。週末の楽しみが、まるごと返済に消える。

週末の土日で返すとなると、1日あたり「いつもの歩数+1万歩」。2万歩は、平均的な日本人の歩数でいえば約3日分だ。
そんな住宅ローンみたいな歩数生活は嫌だ。
このゲームで遊ぶなら、後払いは禁止。あくまで「先に歩いた分だけ、翌日に使える」。これくらいが平和だ。
改めて振り返ると、5,000歩の500円でも、おにぎり2個とお茶でランチは一応成立していた。
だったら逆に、「今日は500円で済ませておこう」と考えるのもアリだ。
もっと食べたければ歩く。歩きたくなければ、予算内でやりくりする。
歩数を増やすゲームと、ランチ代を節約するゲームが、同時に始まるのである。
もちろん、本当に食事を500円以内に縛る必要はないし、必要な食事まで削るのは本末転倒だ。ただ、その日の歩数と支払いを見返すついでに、金額を歩数に換算してみるくらいなら、今日からでもできる。
500円のランチなら5,000歩。
800円なら8,000歩。
1,000円なら1万歩。
そして次に1,200円のランチを見かけたとき、たぶん一度だけこう思うはずだ。
「これ、1万2,000歩か……」
お金と健康の編集チーム
大学生と20代の毎日に役立つ、お金と健康の知識をわかりやすく届ける編集チーム。専門家への取材と、今日から試せる具体性を大切にしています。
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