インタビュー
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Paul Chapman

「ボーン・グローバル企業」 のマネーツリー

Paul Chapman
代表取締役(CEO)・創業者
2018
05
23

「ボーン・グローバル企業」 のマネーツリー

ポール チャップマン CEO

2012年に日本で創業したマネーツリーは、2017年6月、オーストラリア市場への進出を果たしました。今後も世界市場においてさらなる拡大・成長を目指しています。前回マネーツリーのカルチャーについて取材したブログ記事「多文化から生まれた「働き方改革」以前の独自哲学」に続き、今回はグローバル展開を見据えたマネーツリーの人材やチーム作りなどについて代表ポール チャップマンに聞きました。

「国際志向を持つ人材」と「国際感覚を育てる社内環境」

「マネーツリーは、創業時から海外進出を前提としたボーン・グローバル企業です」と代表のポール。世界市場への拡大に向け、どのようなことを大切にしているのでしょうか。

「『人材』と『社内環境』の2つを大切な要素と捉えています。まず人材については、既に国際市場で仕事をした実績がある、もしくは今後国際的な感覚を身につけたいと考えるグローバル志向の高い人材が必要だと思います。そして社内環境においては、いかにして国際感覚を身につけられる環境を創るかを重要視しています。『人材』と『社内環境』が揃うことで、スピード感のあるグローバル展開を実現できると考えています」

現在マネーツリーのスタッフの約6割は外国籍であり、常に多国籍の人材と関わることが求められます。企業のグローバル化を目指す上で必要となる国際感覚を、日々の仕事を通じて身につけられる環境があると言えそうです。

世界で戦うために必要なのは「ストリート スマート力」

多国籍メンバーが集結するマネーツリー。企業活動を行う上で、どのような影響があるのでしょうか?多様なメンバーがいることで、日本そのものを俯瞰でき、さらに彼らの母国と日本、それ以外の国を比較して、ビジネスに役立つ違いに気づくことができるとポールは言います。また、そこから得た経験は、前回のブログ「多文化から生まれた「働き方改革」以前の独自哲学」でも紹介した、「個」を尊重する以上に「和」、つまりは「チームプレー」に重きを置くマネーツリーの「ワーモニー(和+ハーモニー)」という哲学に生かされているとのこと。

「私が掲げる『ワーモニー』は、この気づきから生まれました。日本の企業文化の良い点と他国の良い点の両方を積極的に取り入れていきたいと考えています」。メンバーが多国籍であることが、マネーツリーの企業文化の形成そのものに影響しているようです。

2017年の資金調達以降、新たなメンバーを迎えて規模が拡大し、成長を続けるマネーツリーには、すでに国際感覚を持ったメンバーもいれば、これからグローバルで活躍したいメンバーも在籍しています。マネーツリーのスタッフに限らず、今後グローバルで活躍したい日本人はどのようなスキルを身につけると良いのでしょうか。

「それは『柔軟性』、そして『ストリート スマート (Street Smart) 』だと思います。ストリートスマートは、元々は、都市部の環境に対応できるスキルや知恵を持っていること、という意味です。私はこれを世界を渡り歩くスキルや知恵、つまりは、現場対応力と理解しています。これらは経験値に紐づいた能力だと思います」

代表取締役 ポール チャップマン
積極的な配置転換で経験値を上げるマルチファンクション    


また、現場対応力を強化することに限らず、メンバーの生産性や仕事の効率を高めるためには、多様な経験を積んでもらうことが必要不可欠だといいます。この考えは、マネーツリーのチーム体制にも反映されているようです。

「一人ひとりがマルチファンクション、つまり複数の業務に携われる体制を取っています」この体制のベースには、マネーツリーの少数精鋭主義があるようです。メンバーは一体どのように各プロジェクトにアサインされるのでしょうか。

「一人のスタッフが同じプロダクトに関わり続けることがないように、新規事業を経験したら、次は既存プロダクト、と積極的な配置転換をしています。また、チームは縦ではなく、横のつながりで編成しています。例えば、営業・開発・マーケティング・広報など、別のチャネルを持つメンバーを同じチームにすることで、業務プロセスにおいて様々なメンバーの考え方に触れることができ、視野が広がるきっかけになるはずです」

積極的な配置転換でやりがいを感じる一方、社員にとって強いプレッシャーになることもあるのではないか、という問いに対し、ポールはこのように続けます。

「マネーツリーは離職率が非常に低い会社です。創業して6年になりますが、離職者の人数は一桁。この数字を見る限り、今のところ、現在行っているチームの作り方は、メンバーの過度なプレッシャーになるのではなく、良い刺激になっていると捉えています」

求めるキャリアデザインに最善の環境を与える

ただし、規模が大きくなれば、この求心力が弱まる可能性もあると言えます。マネーツリーは現在、急成長を遂げており、社員数は2017年から2018年にかけておよそ2倍になりました。今後も働きやすい会社であり続けるための施策はあるのでしょうか。

それについては今後、個人の希望を聞きながら会社側が主体となってキャリアプランニングを実施していく予定だという。また、メンバーには、「退職しても戻れる会社」であることを明言。これは、マネーツリーが掲げる「Core Values(コアバリュー)」の中の一つ、「Default Open(オープンな姿勢)」に基づいた表明とのこと。

「私自身は、一定の経験を積んだら、次の冒険に出るということに全く否定的ではありません。むしろ、その先が重要で、他のフィールドで活躍した後、またマネーツリーに戻ってきてくれたら、こんなに嬉しいことはないです。その経験や力が会社に還元されるのですから」

キャリアを形成するにあたり、仕事で十分な経験を積めることが大切になりますが、マネーツリーの一員となったときには、どのような機会が得られるのでしょうか。

「少なくとも、マネーツリーのメンバーは、新しい技術に触れる機会が一層多くなるはずです。なぜならクリエィティビティを重視してプロダクト開発をしており、かつ業界の最新事情を日々探索することに重きをおく企業であるためです。商品の開発にどのメンバーも関与できる環境も後押し、自ら情報をアップデートする機会も創造できると実感しています。また、会社としては、英語力の高い技術者を多く雇用するようにしています。ソフトウェアの開発現場において英語の読解力を持つ人材の活躍は、社内における最新情報を常にアップデートすることに繋がっています。このような環境に身を置くことで、受動的にも自発的にもメンバーにビジネス上の経験値を高めて欲しいと考えています」

「日本発のグローバルカンパニー」のロールモデルになることを目指すマネーツリー。国際感覚あふれる人材、そしてワーモニーの思想を持つことで、グローバルカンパニーの実現を目指しています。

ポール チャップマン

オーストラリア出身。モナシュ大卒。2000年にSaaSスタートアップ「cvMail」を設立後、Thomson Reutersにバイアウトされる。その後en worldでIT部長として勤め、2009年よりアプリ制作に着手、そして2012年マネーツリー株式会社を設立。LinkedInアカウント