ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。海外で生活する上で日本よりも物価が高い国も多くあります。ご自身や家族の仕事、留学などで海外に移住する予定がある方がいらっしゃるかもしれません。今回は、私が住んでいるシンガポールでの生活費用について紹介したいと思います。
「貯金できない」——これはシンガポールに住んでいる日本人からよく聞くセリフです。英経済誌エコノミストの調査部門エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)による「世界の生活費」ランキングではシンガポールがここ数年「1位」を維持している状態です。
物価が高いだけでなく、金融資産が1億ドル(約110億円)を上回る超富裕層の割合が香港に次いで高い国でもあります。街中でもバンバンお金を使いまくり、バブル期の日本を思い起こすデザイナーズブランドの高級品を身につけている富裕層もとても多いのです。富裕層の若年化も進んでおり、大学生でも50万円以上するようなブランドバッグを身につけていたりするお金持ちの国です。
同じ人間でも街の雰囲気によって購買意欲が大きく変わります。日本のようなデフレが続く国で生活をしていると財布を引き締めようと強く感じますが、シンガポールのようなバブルの国で生活をしていると財布が緩みやすくなるのです。また、シンガポールは日本のように自然や食事に恵まれておらず、娯楽が買い物や海外旅行などになりがちなのも出費が増える理由の一つでしょう。
シンガポールで1ヶ月生活をする場合、家族(家族構成は夫婦二人に、教育費のかかる子供が一人とする)で50万円程度かかると考えたほうがよいでしょう。シンガポーリアンの中流階級の1ヶ月の平均の支出額は約37万6000円(2013)ですが、国からの補助で住居費、教育費などを外国人より安く抑えることができます。
<夫婦二人と子ども一人の生活費(一カ月)>
・住居費 22万円
・教育費 8万円
・医療費・保険料 5万円
・交通・通信費 2万5000円
・水道光熱費 1万5000円
・食費・外食費 6万円
・その他 5万円
合計 50万円
住む国にもよりますが、外国人の場合、受けられる住居費、教育費、医療費などの社会保障は少なくなるので日本と比べるとどうしても高くなりがちです。シンガポールの不動産価格は台湾や香港と並んで非常に割高な金額になっています。購入価格が高くなるため、不動産の利回りは日本よりも低いです。そのため非常に高い家賃を払う必要があります。
自動車で30分程度かかる郊外の物件であればファミリータイプが月20万円前後から探すことができますが、中心地は30〜40万円することはザラです。東京や香港の一般的な物件と比べると、広さがあってグレードの高い物件が多いですが、ワンルームなどの小さな物件を探すことは困難です。若年層などは何人かでシェアをして借りているようです。そうすれば一人当たり6〜8万円といった家賃も可能になります。
医療費も自己負担が日本よりも大きいために医療保険などに入って備える必要があります。風邪などで日系の病院に通院した場合、3〜4万円程度請求をされるということもあるので、保険料が日本で生活をしている時と比べて大きくなりがちです。
反面、シンガポールでは食費、被服費、交通費などは工夫をすれば安く抑えることもできます。例えば、昼食なら、外国人が利用するカフェだと2000円程度しますが、フードコートやホーカー(屋台街)などを利用すれば300円程度で済みます。シンガポールで貯めている人はランチ代を安く抑えたり、公共の交通機関で移動をしたりしています。一回一回は地味ですが長く暮らしていると効いてくる節約術になります。こうした地味な節約をしている会社経営者の方も実は多いです。
被服や靴などはセール時に8割9割引も当たり前なので、セール時に必要な物を買うようにすれば被服代を抑えることも可能です。セカンドハンド市場も充実していてお金持ちが良い物を安く売っているので中古品を狙うのも手です。
また、決済方法や銀行を選ぶことでお得に買い物をすることができます。例えば、私は支払いをする際はほとんどカード払いですが、クレジットカードやデビットカードで5%程度の還元を受ける方法があります。また、給与振込指定口座に預金をするなどで2-3%程度利息をもらっています。
何かとお金のかかるシンガポールライフですが、メリハリをつけて生活を送ったり、お金を増やす努力をしながら賢く生活を送ることももちろん可能です。留学や仕事などで海外に行く機会も増えていくでしょう。その際にはその国の制度や物価などを事前に調べて大まかな家計を予測できるとよいですね。
外資系投資銀を経てFPとして独立。著書に『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』、監修本にジム・ロジャーズ著『日本への警告 米中ロ朝鮮半島の激変から人とお金が向かう先を見抜く』 (講談社+α新書)など。
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