ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。拙著『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』の中でシンガポールの教育についても書きましたがその一部をご紹介したいと思います。
世界的投資家、ジム・ロジャーズ氏も娘たちの教育のためにシンガポールに移り住み、娘をローカルスクールに入れています。その理由についてロジャーズ氏は、21世紀はアジアの時代だからアジアを知り、中国語を話せることが重要とメディアや著書の中で語っています。
日本人のシンガポール駐在員の中にも駐在期間が切れても独立して子供の教育のためにシンガポールに残る家庭もいるほどです。日本、中国、韓国、インド、インドネシアなどのアジア周辺国からの親子留学も急増しています。シンガポールで教育を受ける魅力とは一体なんなのでしょうか。
英国の教育専門紙が2017年9月に発表した「世界大学ランキング」によると、シンガポール国立大学は全世界の大学の中で22位となっています。これは日本の最高峰である東京大学(46位)より高く、アジアの大学では首位に位置しています。
15歳を対象にした国際学力テスト(PISA 2015年)では科学的リテラシー、読解力、数学的リテラシーの3分野で世界首位とシンガポールの学力の高さは驚異的です。日本は科学的リテラシー2位、読解力8位、数学的リテラシー5位でした。
なぜこれほどにまで学力が高いかというと、政府が国家予算の約20%も教育に投じている(日本は5.5%)上、各家庭(特に上流階級)でも子供への教育投資が大きいからです。
現地の保育園や幼稚園でも幼少期から英語と中国語のバイリンガル教育は当たり前でAI時代に欠かせないプログロミング教育が充実している学校もあります。子供が3,4歳の頃からそろばんを習ったり、中国語の書き取りの宿題が出たりして親も大変ですが、日本人の家庭で育った子供でも中国語が話せるようになります。ローカルの保育園の料金は月10万円前後で7時〜19時など長時間預かってもらうこともできます。
また、シンガポールは東京23区と同程度の国土に20校以上のインターナショナルスクール(外国人向けの私立学校、以下「インター校」)があり、教育熱心な家庭が多いので、どの学校の学力レベルも非常に高いです。また、多くの学校では日本人の割合が非常に低いので子供も英語を話さざるを得ず英語力が向上しやすいです。ほとんどの学校からスクールバスが出ているので、多少遠くても1時間以内で通うことができ、選択肢はとても多くなります。
シンガポールでは様々な国の駐在員が生活しているため、日本、米国、オーストラリア、カナダ、インド(最近日本のメディアでも話題になっている、インドのインター校「GIIS(グローバル インディアン インターナショナルスクール)」)など、多くの国の学校があります。とはいえ、かつて英国領だったこともあり、シンガポールでは英国系インター校が目立ちます。国際バカロレア(IB)という世界共通の大学入試資格とそれにつながる小・中・高校生の教育プログラムを取り入れたスクールも多く、様々な国の大学試験制度に対応も可能です。
インター校では3歳前後から18歳まで一貫して同じ環境で教育を受けることができる学校が多いので高校までは受験の心配もなく、のびのびと好きなスポーツや音楽、アートなどに打ち込むことができます。語学教育は英語に加えて中国語かスペイン語を第二外国語で低年齢から学べる学校が多いです。
子供にシンガポールで教育を受けさせる場合、現地の公立校に通わせるか、インター校に通わせるかで、大きく料金が変わってきます。
ローカルの公立校の場合、シンガポール国民と永住権保有者(PR)が、学費や学校の選択の面で優先されます。永住権がある場合、日本の公立校とそれほど変わらない金額で、シンガポールの公立校に通わせることができます。英語と中国語の教育を受けられることを考えると公立校の値段は魅力的です。外国人価格の場合も日本で私立学校に通わせる程度の金額になります。ただし、ローカルスクールはシンガポーリアンが優先されるので外国人の場合、学校の選択肢は狭まります。
インター校の学費は年250万円程度(ホリデープログラムなどを除く)と日本でインター校に行かせるのと同程度の値段になります。その中では日系の学校は費用が安めです。また、最近は割安授業料のインター校も複数できたので選択肢は広がりました。外国人が入学をするのが難しい公立校も、いくつかの名門校は留学生向けのインター校を設立しています。こうした公立のインター校も一般的なインター校より学費が安めです。
中学校くらいから子供だけで留学ができる公立および私立のインター校もあります。その場合でも公立のインター校の方が学費は安いです。また、MBAの学費も500万円程度からと欧米の学校に比べると半額程度なので大学院から学んでシンガポールで就職という道もあるでしょう。就職をするのも欧米と比べると比較的簡単です。ここでしか手に入らない人脈、チャンスがあるので、人生のどこかのタイミングで海外に出て学ぶという選択肢も入れるとよいのではないでしょうか。
シンガポールのシステムに興味を持たれた方は、前回のブログ「日本と違う世界の常識、少子高齢化が進むシンガポールの政策」も合わせてご覧ください。
外資系投資銀を経てFPとして独立。著書に『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』、監修本にジム・ロジャーズ著『日本への警告 米中ロ朝鮮半島の激変から人とお金が向かう先を見抜く』 (講談社+α新書)など。
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