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アップルも採用。国際送金手段として注目されるリップル
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アップルも採用。国際送金手段として注目されるリップル

大谷和利
2018
05
30

ブロックチェーンといえば仮想通貨、仮想通貨といえばブロックチェーンというように、切っても切れない関係にある両者ですが、実際の依存関係は一方向のみであることは、読者の皆さんもよくご存知のことと思います。

具体的には、仮想通貨はブロックチェーン技術なしには成り立ちませんが、ブロックチェーンにとって仮想通貨は応用分野の1つに過ぎず、他にも色々な使い道があるということです。

決済手段か、送金手段か

しかし、巷では、ブロックチェーンが仮想通貨のために開発された技術であり、完全に一体のものだと思い込んでいる人も少なからず居るように感じられます。また、仮想通貨自体、次世代の決済手段であったり、投機の対象であったり、新機軸の送金手法であったりと、人によって様々な認識のされ方をしています。

つまり、この分野は、依然として発展途上にあることはもちろんですが、そのために、誤解や曲解が生まれているのが現状でしょう。

たとえば、銀行などの金融機関がブロックチェーンに注目しているといった報道があった場合、銀行に仮想通貨を預金できるようになるとか、仮想通貨ならば利息は多いのかといった期待を抱く人があるかもしれません。しかし、実際の金融機関側の趣旨は、ブロックチェーンの高度な暗号化や分散管理される電子台帳という側面を、金融機関が重視する「よりセキュアで改ざんされにくい取引」のための基盤技術に採り入れたい、ということであったりするわけです。

その観点から、投機的な意味合いは別として、仮想通貨には決済(支払い)手段としての側面と、送金手段としての側面があること。そして、少なくともここしばらくは、後者の価値のほうが高いということを理解しておくと、こうしたトレンドを冷静に捉えることができるのではないかと考えます。

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管理され社会貢献も目指すリップル

また、仮想通貨は、既存の通貨のような管理の仕組みがなく、電子的なマイニング(採掘)競争が行われ、自由な発展が見込める反面、責任の所在が明確でなく危険なところもある、との見方をされるのが一般的と思われます。確かに、最も知名度が高いと思われるビットコインの場合にはその通りですが、実際は、そうではない仮想通貨も存在しているのです。

たとえば、リップルという仮想通貨(実際の通貨名は、XRP)は、開発元のリップル社や他の企業が発行総量である1,000億リップルコイン(XRP)を分担して保有しており、マイニングする必要がなく、管理も行われています。さらに、リップル社に出資、あるいは共同で運用試験などを行なっている企業も多いため、その意味での社会信用度も高いといってよいでしょう。

便宜上、「リップルという仮想通貨」と書きましたが、実際のリップルは、「即時グロス決済システム」兼「国際送金ネットワーク」であって、そのネットワークにおけるネイティブな通貨がXRPという位置付けです。ちなみに、「即時グロス決済システム」とは、決済が1件ずつ即時に行われる処理方式を意味し、ビットコインのように決済の停滞が連鎖的に起こるリスクを低減したシステムとされています。

リップルが他の仮想通貨と異なる点は他にもあり、「ネットワークに信頼、実用性、流動性を構築するような行動にインセンティブを与える」という目標を持って全体の設計が行われている点もユニークです。そして、マイニングによる報酬がない代わりに、難病研究などに関わる計算にコンピュータのCPUタイムを提供することで購入権が得られるような、社会貢献の仕組みを組み込めるユニークなシステムも採り入れられています。

さらに、リップルのネットワークへのアクセスには、取引サービスの手数料と永続性維持の担保として少額のXPRの支払いが必要となりますが、これは、大量の攻撃を仕掛けようとする悪意のハッカーを破産させ、一般ユーザーは実質無料で利用できるようにするための、考え抜かれた工夫なのです。

異なる台帳間のブリッジとなるプロトコル

そして、リップルの国際送金システムとしての側面を支えるのが、「インターレジャー・プロトコル(ILP)」と呼ばれる電子台帳間の送金規格です。

世界中に多くの通貨が存在するように、仮想通貨も最も知られたビットコイン以外に様々なものが誕生し、今後も国や企業が独自の仮想通貨を提供する可能性が高い状況にあります。

世界単一通貨(あるいは、世界単一仮想通貨)というのは1つの理想ではあっても、現実は、銀行や企業、国ごとに通貨に求めるものが異なるため、現在のような複数通貨の併存がこれからも続くことは間違いありません。

また、ビットコインやリップル自体もオープンなブロックチェーンに基づくネットワークシステムであるため、これをそのまま利用して銀行業務を行うと、預金残高はもちろん、送金の日時や相手に至るまで、理論上は、誰もが確認できる状態に置かれていまします。これが、既存の金融機関が仮想通貨のネットワークを利用できない(利用しない)理由です。

そのために必要となるのが、取引の詳細をあくまでも当事者と関与する機関のみが知りうる状態で、かつ、クローズドな異なるブロックチェーン台帳間の仲介ができる標準的な規格であり、ILPは、まさにそれを実現するものとなっています。

そんな中、日本の三菱UFJフィナンシャル・グループが、同グループの子会社でもあるタイのアユタヤ銀行、および業務提携先の英国スタンダードチャータード銀行の協力を得て、リップルのネットワークを使った国際送金の実証事件を行い成功させたり、アップルがApple Payをリップルに対応させ、OSレベルでサポートしていくことを発表するなど、リップルのコンセプトや取り組みが評価されての動きが目立つようになってきています。

国際送金実験では、通常の国際銀行間通信協会(英語名のSociety for Worldwide Interbank Financial Telecommunicationの略称は、皮肉にもSWIFT=素早い)のネットワークで数日間かかるところが、ほぼ瞬時に完了。アップルが、ビットコインを差し置いて、まずリップルを採用したことも、その送金手段としての優秀性や信用度が改めて確認された形なのです。

このように投機対象ではない仮想通貨とそのインフラは、確実に一般社会に根付いていこうとしている。これからも、こうした新技術の健全な側面が伸びていくことを、望むばかりです。

筆者プロフィール

大谷和利

テクノロジーライター,原宿AssistOnアドバイザー,自称路上写真家。Macintosh専門誌, デザイン評論誌, 自転車雑誌などの誌上でコンピュータ,カメラ,写真,デザイン,自転車分野の文筆活動を行うかたわら,製品開発のコンサルティングも手がける。<a href="http://www.assiston.co.jp/shopinfo" rel="nofollow" target="_blank">原宿アシストオンのウェブサイト</a>

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