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モノをモノとして、風景を風景として愛するということ(前編)
トレンドを知る

モノをモノとして、風景を風景として愛するということ(前編)

大谷和利
2016
09
21

今回は、社会現象的な様相を呈している「ポケモンGO」とも関連するのですが、モノでも風景でも、その本質を見極めて、そのものを愛することの重要性について考えてみることにします。実はこのテーマ、もう何年も前から筆者の中に渦巻いていて、今回の騒動は、それを一度まとめてみる良い機会だと感じたのです。

ポケモンGOには、いわゆる「歩きスマホ」を助長するという意見があったり、実際にクルマの運転中に使用したとして検挙されるユーザーが原稿執筆の時点ですでに727件、関連事故が59件(人身事故15件を含む)に上っていたりします。

一方では、引きこもりやうつ的症状の予防や改善に効果があるという考え方も見られ、今更ではありますが「技術そのものは善でも悪でもなく、使い方次第でそのどちらにもなる」という点で、自動車や銃刀類と同様に、議論は平行線をたどりそうです。

ポケモンGo_1

ナイアンテックの定めるゲームの世界観

しかし、だとしても、主体的な開発元である米ナイアンティックのCEOが、非公式のポケモン探索ツールである「Pokevision」などに苦言を呈し、「ゲームの楽しみを損ない、楽しくないし好きではない。データをシステムから取得している点で規約違反」と非難していることを、どのように捉えるべきでしょうか?その後、アプリアップデートの影響か、それらのツールは利用不可になっています。

このCEOの発言の意図は、「自分たちがある目的(この場合には、ゲームの楽しみ)のために決めた世界観とルールからはみ出すような使い方は認めない」ということでしょう。このことを徹底するには、ナイアンティックはシステムに少しの変更を加えるだけでよく、その結果「不埒な」ツールは有無を言わさず一掃されたわけです。

筆者としては、歩きスマホやながらスマホ防止のために、ユーザーが停止しているときのみポケモンが見えるような仕組みも簡単に組み込めそうに感じますが、開発側がそうしないのは、ユーザーの歩みを強制的に止めて遊ばせることもゲームの楽しみを奪うと考えているのかもしれません。

互いの世界観を守る

ところで、現実の世界にも、特定の目的のために、独自の世界観と暗黙のルールを持つ場所があります。たとえば、寺社や慰霊に関わるようなエリアはわかりやすい例ですし、歴史的な保存地区もこれにあたるでしょう。さらに、実際にはごく普通の住宅地などでも、そこに住む人たちがこうあって欲しいと願う、一定の雰囲気や住環境に関する思いが存在しています。それは、住民が楽しく快適に暮らすために必要なものだからです。

ナイアンティックが、自分たちのゲームの世界観を守ることを正義だと考えるならば、同時に、知らぬ間にその舞台と化してしまった様々な地域や地区の世界観を守る仕組みも考えてしかるべきではないかと思います。また、ポケモンGOは、基本無料+アプリ内課金によるユーザー側からの収入に加えて、ジムやポケストップを設置したパートナー企業からライセンス料を聴取するビジネスモデルが注目されています。大きな設備投資なしに顧客を増やせるのですから、産業界が注目しない理由はないでしょう。

ポケモンGo_2

いずれにしても、今後、ポケモンGOのようなARゲームの流れを止めることはできそうにありません。そうであるならば、(お金がすべてではないとしても)望んでジムやポケストップになった企業から対価を徴収する一方で、図らずもそうしたスポットにされてしまった施設のオーナーや、地域の自治体には逆に利益を還元するようなシステムも必要になってくるのではないか? そんなことを思ったりもするのです。

次回の後編では、キャラクターとモノの価値の関係について、さらに考察していきます。

筆者プロフィール

大谷和利

テクノロジーライター,原宿AssistOnアドバイザー,自称路上写真家。Macintosh専門誌, デザイン評論誌, 自転車雑誌などの誌上でコンピュータ,カメラ,写真,デザイン,自転車分野の文筆活動を行うかたわら,製品開発のコンサルティングも手がける。<a href="http://www.assiston.co.jp/shopinfo" rel="nofollow" target="_blank">原宿アシストオンのウェブサイト</a>

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