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どうして「老後資金に2000万円必要」なの? FPが解説
将来に備える

どうして「老後資金に2000万円必要」なの? FPが解説

花輪陽子
2019
07
10

ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。金融庁が「老後資金として2000万円の蓄えが必要」と指摘したレポートを発表し、大変な話題となっています。なぜ老後資金に2000万円が必要になるのか、老後に向けた資産形成やライフプランを加入している年金別に一緒に考えていきましょう。

老後に必要なお金はいくら ケース別に解説

「総務省家計調査2017年」によると、高齢夫婦、無職世帯の1カ月の消費支出および非消費支出(生活費以外の税金や社会保障費などの支出)の平均額は26万3717円です。これは、生活費や住居費(持ち家が前提)、医療費に加えて、非消費支出の支払いなども含めた金額です。この金額から65歳から90歳までの生活費の総額を出すと、約7912万円となるのです。

 この莫大な生活費を一体何で補うかと言うと、大部分は年金からになります。年金ネットなどで自分が受給する年金の金額を試算することができます。年金の総額から老後の生活費を引き、不足した分を預貯金や労働などで補う必要があるのです。

1) 片方が会社員でもう一方が専業主婦・主夫の場合

まずは、一方が厚生年金で、一方が被扶養者などで国民年金の夫婦というパターンを見ていきましょう。夫が会社員で、平均的な報酬(賞与含む月額換算)が42.8万円で40年間就業した場合、65歳からの夫婦2人で標準的な年金の受け取り額は、月額22万1504円です(H31年金額 厚生労働省)。

 この場合、65歳から90歳までの年金の総額は約6645万円になります。先ほどの生活費の総額(約7912万円)から引くと、不足額が1267万円になります。こちらの不足額を老後の資金として貯蓄などで貯める必要があるということになります。

2)自営業者の夫婦の場合

 自営業者で夫婦共に国民年金に加入している場合はどうでしょうか。 65歳からの標準的な年金の受け取り額は1人当たり月額6万5008円。2人分で13万16円になります。この数字をもとに計算すると、65歳から90歳までの年金の総額は約3900万円となります。自営業者の場合、元気な限り長く働く方も多いので、70歳まで働くケースで見てみましょう。この場合、年金総額は変わらず3900万円、生活費は70歳から90歳までの20年間で約6329万円になります。こちらを差し引くと、不足額が約2429万円となります。

3)夫婦ともに会社員の場合

 次は、夫婦ともに会社員で厚生年金をもらうパターンです。このケースで、65歳から受け取る標準的な厚生年金額は、月額15万6496円で、2人分で31万2992円。65歳から90歳までの年金の総額が約9390万円になります。  先ほどの生活費の総額(約7912万円)から計算をすると、1478万円のプラスになります。平均的な報酬(賞与含む月額換算)が42.8万円で40年間就業したケースでの試算のため、ハードルは高いですが、パワーカップルは老後にも強いということが分かります。多くの先進国では生活を維持するために共働きをしているので、日本でも子供が生まれた後も共働きを継続するカップルがより増えていくでしょう。

4)シングルで会社員の場合

最後に、単身で厚生年金に加入しているパターンです。このケースでは、65歳から受け取る標準的な厚生年金額は月額15万6496円、65歳から90歳までの年金の総額が約4695万円になります。

 老後の生活費はどのくらいかかるでしょうか。「総務省家計調査2017年」によると、高齢単身無職世帯の1カ月の消費支出および非消費支出の平均額は15万4742円です。こちらから65歳から90歳までの生活費の総額を算出すると、約4642万円になります。先ほどの年金額から生活費を差し引くと、53万円のプラスになります。 よく単身だと老後が不安という声を聞きますが、お金のかかるイベントも少ないので、数字を見ると、なんとかしのげる計算になります。もしもの時に、頼れる知人や友人がいるとさらに安心です。

早期からライフプランを立て、資産形成を始めよう

 老後に必要な資金は、このように老後の生活費と年金額から試算することができます。加入している年金を元にした一般的なシミュレーションなので、より自分の家計にあった老後のプランニングをするにはFPに相談をしたり、自分でシミュレーションをしてみましょう。

 老後の支出額は各家庭によって大きく変わりますが、現役時代の生活費の7割を目安にするといいでしょう。さらに、医療費や介護などの備えとして、1000万円前後備えておきたいところです。

 年金額は、「ねんきんネット」で将来の年金額をもとに試算すると、老後に必要な資金をより正確に算定することができます。厚生年金額は報酬額によって大きく変わり、国民年金の場合も収めた期間によって金額が大きく異なります。

 日本FP協会の「今からはじめるリタイヤメントプランニング 〜50代から考えるセカンドライフ〜」も一読すると参考になります。また、協会ではFP無料相談を体験することも可能。50代からと言わずにお金が足りない若い世代も時間を味方につけて今から老後の準備を始めたいところです。

筆者プロフィール

花輪陽子

外資系投資銀を経てFPとして独立。著書に『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』、監修本にジム・ロジャーズ著『日本への警告 米中ロ朝鮮半島の激変から人とお金が向かう先を見抜く』 (講談社+α新書)など。

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