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『貯金が苦手』はどうすればいい?100万円以上貯められない独身女性が貯金を増やすには- FPに聞く資産形成シリーズ
家計を見直す

『貯金が苦手』はどうすればいい?100万円以上貯められない独身女性が貯金を増やすには- FPに聞く資産形成シリーズ

武藤貴子
2021
09
16
お悩み:

貯金がとても苦手です。海外旅行や高級ホテル巡りが趣味で、年に何度か一気に使ってしまいます。コロナ禍では、「Gotoトラベル」を使い都内のホテルなども利用しました。独身で実家暮らし、生活に困ることもないので、「貯金が100万円もあればいい」と、それ以上貯めたことがありません。買い物も好きです。甘いでしょうが、一人暮らしの予定もないし、結婚すれば相手の収入があるし…と、自分がたくさん貯金する目的が見当たりません。

ただ、会社に勤めていますが、ずっと国民年金の被保険者です。先日、知り合いに「年金だけじゃ将来生活できないよ」と指摘され少し心配です。できればお金を使うことをやめず、貯金も増やすのが希望です。


相談者:38歳 女性(美容サービス業)

家族構成: 両親と3人暮らし
手取り年収: 
約20万円(副業で+8~10万円)

加入年金: 国民年金、国民健康保険に加入し手取りから自分で保険料を支払っている
退職金:
 なし

現在の保有資産は以下の通り
普通預金 約102万円

ある1ヶ月の支出は以下の通り

1ヶ月の支出

※その他、国民年金・国民健康保険の保険料を支払い、実家に生活費3万円を入れている


【今後想定しているライフイベント】
・今のところ特になし

【想定している年間イベント】
・海外旅行、高級ホテル巡りなど年数回(現在は都内のホテル巡りをしている)
・家族旅行年2回

お金のプロからのアドバイス

貯金額は、収入以上に本人の意識が大きく影響します。今回の相談者のように、実家暮らしで自由にお金が使えるという恵まれた環境の場合、「今のうちに貯めておこう」と貯金に励む人と、ついつい消費に走ってしまう人に分かれる傾向があります。貯金ばかりして今を楽しめないのも問題ですが、将来を考えず収入をほとんど消費にまわすのも考えものです。お金を使う楽しみを残しながら、必要な備えをスタートしましょう。


■お金への意識や使い方、良い点と悪い点は

貯金が苦手で、将来のプランは他人任せ、老後も心配…と、少し前途多難な今回の相談者。38歳にして、お金に対する意識にも甘い面があります。一方で、ヒアリングをしていると、家計簿を付けているなどしっかりした部分も見えてきました。まずは相談者のお金への意識や使い方で良い点と悪い点を洗い出し、改善ポイントを見つけていきます。


<良い点>

・家計簿を付けている

毎月、家計簿アプリでお金の流れをしっかり記録しています。また、無計画な買い物などはほとんどありませんでした。お金を無駄遣いせず、「意味あることに使いたい」という意識があるのはとても良い点です。


・お金の使い方にメリハリがある

海外旅行やホテル巡り、買い物など大きな出費がありますが、普段はそのために節約しています。仕事の日はなるべく自宅からお弁当や水筒を持参し、食費を抑える努力も見られました。


・副業をして副収入を得ている

相談者は一度転職をしており、それにより収入がダウンしました。しかし、前職より大幅に勤務時間が短くなり、その時間を使って副業をしています。副収入は月8~10万円で、これで下がった分の収入をほぼカバーできる形です。転職によりできた時間と余力を有効活用し、しっかり成果が出せているのは素晴らしいことです。会社の給料以外にも、自分の力で稼ぐ手段を持っている点も、大変な強みと言えるでしょう。


・貯金を全くしていないわけではない

「実家暮らしだし100万円も貯めていればそれでいいや」と考えてしまい、貯金がそこから全く増やせないという相談者。しかし、貯金をそれ以上減らさないという意識はあり、「貯金ゼロ」になるまでお金を使い切ってしまうわけではありません。問題なのは、何のためにいくら貯めなければいけないのか把握していないこと。お金を貯める目的が自分の中ではっきりし、納得できれば、もっと貯められるはずです。


・結婚する時のためのお金を確保している

就職以来、実家に生活費として毎月3万円を入れています。このお金はご両親が相談者の結婚資金として貯めており、総額は約650万円にものぼっています。結婚資金としては充分な金額でしょう。自分では貯められず、結婚後の生活費も相手任せの面がある相談者ですが、毎月おさめていたお金をご両親が管理してくれたおかげで、近い将来使うかもしれない資金を確保できています。


<悪い点>

・将来への危機意識が薄い

一方で、将来に対しての危機意識が薄く、老後の生活費に関して不安があるものの、「今から考えなければ」より「何とかなるだろう」という考えが強いようです。現在はご両親が健在ですし、自分が働いているうちは問題ないかもしれません。しかし、相談者の場合、勤め先で一度も厚生年金に加入したことがなく、20歳で就職した時から現在まで国民年金の被保険者です。知り合いから指摘されたように、公的年金だけでは、老後の生活費が不足する恐れがあります。このままでは、高齢になっても働き続ける生活が現実的となるでしょう。40代を目の前にした今、自分の老後について真剣に考える必要があります。


・計画的だが高価な買い物が多い

相談者は、日頃から何となくお金を使ってしまう「ダラダラ散財タイプ」ではありません。しかし、自分が欲しいモノや好きなことには、迷いなくお金を使ってしまうタイプと言えます。たとえば、旅行やホテル巡り以外にも、ブランド物の靴や洋服、バッグなどの買い物が目につきます。「高価でも計画的な購入ならいいのでは」と思いますが、必要な備えをしないままでは問題です。お金に優先順位をつけ、優先度の高いものから使う習慣を身に着けることが大切です。


■給料と副収入の使い道にルールを設ける

以上から具体的な改善点を探ると、①老後の備えを始める②お金の使い道にルールを設けるという2点が特に重要になります。①については詳しく後述しますが、老後資金をしっかり貯めるためにも、「会社からの給料で生活費や将来の積立を行い、副業で稼いだ分は好きなことに使える」などルールを作ることが有効でしょう。


副収入があることは素晴らしいですが、本業がある以上、副業はあくまで副業です。会社の給料は必要なことに使い、プラスで稼いだ副収入は好きに使っていいと決める。そうすれば、相談者の希望通り、お金を使うことをガマンせず貯金を増やすことが叶います。


■今から老後資金を増やす方法

貯金をあまりしていないことで一番不安なのは、やはりリタイア後の生活費の不足です。厚生労働省の「平成30年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金のみの平均年金月額は約5万6,000円。ちなみに、納付期間の40年間、満額を支払い続けると、年金月額は約6万5,000円となります。相談者はこれまで一度も欠かさず年金保険料を払い続けていますが、老後までに満額を支払っても、月に6万5,000円しか年金が支給されないのです。


このままでは、老後の生活費が足りなくなるのは明白です。さらに、仮に実家に住み続けたとしても、いずれリフォーム費用等(戸建てで500万円が目安)がかかること、また、病気やケガに備えるお金(200~300万円が目安)も必要と考えると、自身で老後資金を増やすことが急務と言えるでしょう。ちなみに、公的年金以外で準備するべき老後資金を計算するには、以下の式に当てはめて算出します。


①60~64歳の無年金期間の生活費

毎月の生活費×12ヶ月×5年間


②65歳から寿命までの生活費

公的年金だけでは足りない金額×12ヶ月×25年間

※ここでは90歳と仮定


③病気や介護に備えるお金やリフォーム費用、旅行費用など


①~③の合計から退職金や企業年金、個人年金保険などの保険金、その他老後のために用意できているお金を差し引きます。その金額を、自分で準備すればいいということです。総務省「家計調査年報(家計収支編)2019年(令和元年)Ⅱ総世帯及び単身世帯の家計収支」によると、60歳以上の高齢単身無職世帯の消費支出は、月々13万9,739円。仮に生涯独身を通し、老後の生活費が月約14万円とした時の必要資金の合計は、相談者のケースに当てはめて計算してみると、


①14万円×12ヶ月×5年間=840万円

②(14万円-6万5,000円)×12ヶ月×25年間=2,250万円

③200万円+500万円=700万円(病気やケガに備えるお金を200万円、リフォーム費用を500万円と想定)


①+②+③=3,790万円


となりました。なお、相談者に公的年金以外の退職金などはありませんので、老後、毎月14万円で生活する場合に必要な金額は約3,800万円となります。ただし、結婚した場合は、改めて相手の年金額や退職金等をふまえて計算する必要があります。また、仮にこのまま60歳まで独身、実家に暮らし、家に3万円ずつ生活費を入れ続けると、その総額は1,440万円にもなります。このお金を老後資金に充てられるなら、残りは2,350万円。そこで、2,350万円をiDeCo(個人型確定拠出年金)によって貯めるシミュレーションをしてみました。

※積立期間22年、毎月の積立金額6万3,000円、運用利率3%、国民年金第1号被保険者として計算

目標である2,350万円を今から60歳までに貯めるには、毎月6万3,000円を積み立てれば達成できる可能性があることがわかりました。先述したように、旅行やホテル、ブランド物の買い物など好きなことに使うお金を副収入から出す点だけ気を付ければ、今のペースでお金を使っても、老後のために必要な積立できます。さらに、銀行の「自動積立定期預金」などを利用してもう一つ先取り貯金ができれば、尚良いでしょう。今からでも遅くはありません。気づいた時から「貯める仕組み」を作れば、老後の安心は手に入るのです。


お金の不安を漠然としたものにしないこと

実家暮らしで生活に困ったことがない人がいると、「一度、一人暮らしするべきだ」と言う人がいます。確かに、自分の収入だけでやりくりする経験は必要かもしれません。一方で、「実家暮らしで余裕のある環境を活用すればいい」という考え方もあります。正解はありませんが、いずれにしても、このご時世、「将来のために何もしなくても安泰」という人はほとんどいないでしょう。「老後が不安」なら、その不安を漠然としたものにはせず、具体的にどのような対策を講じればいいのか明らかにすることが大切です。

筆者プロフィール

武藤貴子

ファイナンシャル・プランナー(AFP)。1983年埼玉県生まれ。会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやコラム執筆を行う。独立後は、起業のコンサルティング業務とともに、執筆や個人マネー相談、メディア出演などを中心に活動中。著書に『いちばん稼ぎやすい簡単ブログ副業』(河出書房新社)がある。

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