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配偶者控除と夫婦の働き方
制度を知る

配偶者控除と夫婦の働き方

風呂内亜矢
2016
12
06

配偶者控除見直しの動向に注目が集まっています。最終的にどのような制度変更になるか見守りつつ、これからの働き方を考える機会にしていきたいところです。

現在の税制は実は共働き優遇?

個人の所得税、住民税は、「収入」から経費・控除などを差し引いた「所得」を算出して、所得税には所得に応じた税率(所得が多いほど税率が高い累進課税)を、住民税には一律10%の税率をかけて計算されています。

配偶者控除は「収入」から差し引かれる控除の1つで、所得税では38万円、住民税では33万円です。控除された分、「所得」が少なくなるため、例えば所得税率5%(住民税は一律10%)の人の場合、所得税1.9万円(38万円×5%)、住民税3.3万円(33万円×10%)の減税につながります。

配偶者控除以外に全ての人が「基礎控除」という控除が受けられます。基礎控除の金額も配偶者控除同様に所得税では38万円、住民税では33万円です。

夫婦のうち、夫だけが働いている場合、夫が「基礎控除」と「配偶者控除」を受け、所得税については所得に応じて税率が上がります。一方、共働きの場合、夫も妻も「基礎控除」の適用を受けることになります。夫のみが収入を得て「基礎控除」と「配偶者控除」を受ける場合と控除額は変わりません。

その上で、個人の所得が高いと所得税の税率が上がるため、実は世帯収入が同じであれば夫と妻が同程度の収入を分担して稼いでいる方が手取金額は多くなります。

こうした仕組みから、社会保障に詳しい大和総研・研究員の是枝俊悟氏のレポートでも、以前より日本の税制は共働き世帯の方が有利であると指摘されています。

パート収入の場合はさらに控除が受けられる?

今回議論になっている配偶者控除の範囲内で妻が仕事をした場合はどうなるでしょうか。例えば夫は会社員、妻はパートで103万円未満の年収を得ている場合、夫の税額を計算するときには「基礎控除」と「配偶者控除」が、妻の税額を計算するときには「基礎控除」が適用されます。控除額だけに注目すればもっとも有利に見えるかもしれません。

加えて企業によっては妻の年収が103万円未満であれば扶養手当を支給するところもあり、各家庭において共働きをしたとしても、妻の収入を103万円(あるいは社会保障の扶養からはずれ手取りが大きく下がる130万円)を超えないように収入調整することは合理的な判断ともいえます。

配偶者控除の103万円や社会保障の130万円の壁を飛び越えて、甲斐(労働の増加に見合う手取りの増額)のある働きをしようとすると、年収200万円以上を狙う必要があるという試算もあります。

103万円や130万円を意識して働く妻に話を聞くと、子育てや介護、夫の転勤など、家庭運営に柔軟な対応をするためには、年収200万円以上を獲得する労働との両立は難しいという声も多いです。時給1,000円で働くと仮定した場合、一日5時間程度の労働はできても、8時間となると保育園の送り迎えがままならなくなると話す人もいます。女性が年収の壁を意識せずに働けるようになるには、待機児童問題の解消や、男性も家庭運営に関わることのできる労働環境、家庭を支えるために一度キャリアをお休みした人が社会復帰しやすい雇用環境など、配偶者控除以外の整備も進んでいく必要がありそうです。

現在、配偶者控除の適用基準を103万円から引き上げる案も浮上していますが、議論はまだ継続中です。制度改正の議論が話題になっていることをきっかけに、我が家にとって適切な働き方や、夫婦で家庭運営とキャリアをどのように考え分担していくのか、話し合う機会にできると良いかもしれません。

筆者プロフィール

風呂内亜矢

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者/1級ファイナンシャル・プランニング技能士)、宅地建物取引士。1978年生まれ。岡山出身。 IT企業に勤めていた26歳のとき、貯金80万円で自宅用としてマンションを衝動買いしたものの、物件価格以外にも費用がかかることを知り、あわててお金の勉強と貯金を始める。現在は自宅を含め夫婦で4つの物件を保有し、賃料収入を得ている。テレビ、ラジオ、雑誌、新聞などで「お金に関する情報」を精力的に発信している。 著書に『その節約はキケンです~お金が貯まる人はなぜ家計簿をつけないのか~』(祥伝社)等がある。

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