会社経営において、法人口座は必須ではありません。しかし、「事業をスムーズに進める」「経理処理を簡略化する」といった面では、欠かせない口座です。
今回は、法人口座となどのような口座なのか、基本的な部分とメリット・デメリットを解説します。開設手続きの流れや必要なものも解説するので、手続きを始める際はぜひ参考にしてみてください。
法人口座とは?
法人口座とは、会社名義でつくる銀行口座を指します。法人が事業活動するうえで、お金のやり取りを行うために必要な口座です。
法人口座の開設は任意ですが、個人名義ではプライベート用の口座と混同されるおそれがあるほか、経理処理で混乱をきたすリスクもあります。法人設立の際は、法人口座の開設も行いましょう。
法人口座を開設するメリット
法人口座開設のメリットを6つ解説しますので、手間や時間を惜しんで口座開設ができていない人はぜひ参考にしてみてください。
① 社会的信用度が上がる
法人口座の開設により、「口座の公私混同を防ぐ」「法人としての実態」などをアピールでき、社会的信用度が上がります。金融機関や取引先から信頼を得やすくなるため、事業活動の安定化を図るうえでもメリットがあるでしょう。
② 個人の財産とわけて管理ができるようになる
法人と個人、2種類の口座を保有することで、個人の財産をわけて管理しやすくなります。個人口座で会社のお金をやり取りした場合、経理処理の際に個人使用分をわけて処理しなければなりません。事務作業の効率化を図るためにも、法人口座開設を検討しましょう。
③ 会社の財務状況を把握しやすくなる
通帳はもちろん、インターネットバンキングなどの入出金明細データをもとに、事業活動にけるお金の流れを把握しやすくなるでしょう。各支出項目に目を通し、事業活動を圧迫している支出が見つかれば、経営の健全性向上にもつながります。
④ 借入がしやすくなったり、借入金額が高くなったりする
法人口座を保有していることで金融機関からの信頼を得やすくなり、借入のハードルが下がったり、金額が高くなったりするケースもあります。融資を受ける際、法人口座が指定されることもあるため、法人設立の際は法人口座の開設も行いましょう。
⑤ 法人クレジットカードをつくれるようになる
法人クレジットカードには、以下のメリットがあります。
・経費の支払いなどで立替払いする必要がない
・公私混同を避けやすい
・ポイント還元や付帯サービス(空港ラウンジなど)も受けられる
主なメリットは経理処理の手間を省くことですが、クレジットカードならではのサービスが受けられるのも法人クレジットカードの魅力です。
⑥ 手数料を節約できる場合がある
主要な取引先と同じ金融機関で法人口座を開設しておくと、振込手数料を節約できるでしょう。都市銀行や地方銀行の場合、同一銀行宛の振込では手数料が無料になるケースもあります。
メガバンクにおいても他金融機関宛より手数料が安くなるため、法人口座開設の際は金融機関を厳選することも大切です。
法人口座を開設できる金融機関の種類
法人口座を開設できる金融機関の種類について、特徴とあわせて解説します。
メガバンク、都市銀行
メガバンク・都市銀行の特徴は次のとおりです。
・国内全国に支店がある
・口座開設のハードルは高いが、信頼度が上がる
・より高額な融資を受けやすい
メガバンクは規模が大きく、金融商品・サービスも充実しています。海外取引にも利用しやすいため、選択肢の一つに加えておきましょう。
地方銀行
地方銀行の特徴は次のとおりです。
・メガバンクより審査に通りやすい
・融資の相談に乗ってもらいやすい
地方銀行は地域活性の役割も担っており、融資を受ける際は親身になって話を聞いてもらいやすいです。法人設立直後でも、融資を受けられる可能性があります。
ゆうちょ銀行
ゆうちょ銀行の特徴は次のとおりです。
・口座開設の審査に通りやすい
・入出金事務のサービスが豊富(給与振込や自動払出しなど)
・全国に支店がある
ゆうちょ銀行は国内全国に支店があり、知名度も高い金融機関です。預入は1,300万円までですが、審査に通りやすいため、選択肢に加えてみましょう。
ネット銀行
ネット銀行の特徴は次のとおりです。
・口座開設の審査ハードルが低く、約1~2週間で開設できる
・各種手数料が安い
・24時間365日利用できる
ネット銀行はオンライン上で口座開設できるほか、口座開設までスピーディーに進みます。ただし社会的な信頼度は、メガバンクや地方銀行ほど期待できません。
信用金庫
信用金庫の特徴は次のとおりです。
・対象は中小企業のみ(資本金9億円以下、従業員300名以下)
・金利は高いものの、社長の人柄や事業の成長性などで融資審査を判断してもらえる
信用金庫は地域社会の発展を目的としているため、ほかの金融機関より融資を受けやすいことが特徴です。対象企業は限定的ですが、法人口座の開設ハードルは高くありません。
法人口座を開設する流れ
法人口座開設の流れについて、次項から順を追って解説します。各種手続きは、代表者自ら行う必要があることを前提に目を通してみてください。
① 必要なものを準備する
法人口座開設には、以下の書類が必要です。
<必要書類>
・履歴事項全部証明書(登記事項証明書)
・本人確認資料(パスポートや運転免許証など)
ほかの書類は金融機関によって必要の有無が異なるため、事前に確認してください。
②法人口座開設を申し込む
必要書類をそろえたあと、金融機関窓口かWebサイトなどから申し込みましょう。Webサイトの場合、スマートフォンやPCなどで必要書類を添付し、各種情報の入力を行います。書類に不備がある場合、受け付けてもらえないため必ず確認してください。
また申し込み当日は事業内容・計画などを説明するケースもあるため、説明資料も念のため準備しましょう。
③審査を受ける
提出書類やヒアリング、金融機関の調査から、口座開設の審査が行われます。審査期間は1ヶ月程度かかる可能性もあるため、余裕のあるスケジュールで手続きを進めましょう。
④法人口座の開設が完了する
審査に通れば、法人口座を開設できます。開設手続き完了後、通帳・キャッシュカードが郵送されます。法人クレジットカードの作成も可能なので、必要な場合は別途手続きを行いましょう。
法人口座開設の審査基準・見られるポイント
法人口座開設の審査基準やチェックされるポイントを6つ解説します。
資本金額はいくらか
会社の資本金は事業に必要な資金源であり、会社の健全性を把握する指標となります。資本金には具体的な制約がなく、1円でも会社は設立できます。
しかし予定する事業に対して資本金が少なすぎる場合、ダミー会社の疑いをかけられるおそれがあるので注意してください。
固定電話があるか
固定電話の有無は、実在する会社かどうか判断する材料として利用されます。法人口座開設に必要な情報は金融機関によって異なるため、固定電話の必要性についても確認しましょう。
登記されている住所で事業をしているか
レンタルオフィス(バーチャルオフィス)は犯罪の拠点として利用されるケースもあり、登記上の住所で事業活動していない場合は審査に落ちる可能性があります。事業内容や拠点を選んだ理由などが明確であれば審査に通る可能性もあるため、書類作成や面談の際は必ず詳細を記載しましょう。
事業目的や内容が明確か
事業内容は法人としての実態をつかむ情報元となるので、事業計画書はもちろん、口頭での説明も行えるよう準備してください。創業者の経歴や事業を始める経緯・目的などに一貫性を持たせることができれば、信頼を得やすくなるでしょう。
取引先や顧客との契約書、領収書がある
契約書・領収書は、会社としての健全性をチェックするために提出を求められる可能性があります。実績のある企業は信用度が高まり、審査の通過率をアップさせられます。
公式サイトがあるか
会社の公式サイトは、事業内容や実績など、会社としての実態を確認する情報元として審査で利用されます。サイトは、知識なしでも制作できるツール・サービスがあるため、審査を受ける前に制作しましょう。
まとめ
法人口座は、会社名義でお金のやり取りを行う際に必要となる口座です。個人名義でも取引は可能ですが、会社としての信頼度に欠けるかもしれません。
また、法人クレジットカードや経理処理の簡略化なども考慮すると、法人口座は会社設立の際に作成した方が無難でしょう。ただし法人口座は開設までのハードルが高く、準備を怠ると解説できないおそれもあります。
「法人口座開設の審査基準・見られるポイント」で解説した内容も参考に、適切な準備を進めて、少しでも審査を有利に進めましょう。