法人の区分や所得金額の区分によって税率は変わりますが、普通法人(株式会社、合同会社など)の企業活動による所得には、原則として23.2%の法人税が課されます。事業経営をしていくにあたり、少しでも税の負担を減らしたいと考える経営者の方も多いでしょう。
そこで今回は、法人におすすめの節税対策を20個厳選して解説します。できそうなものから、ぜひ始めてみましょう。
法人の節税対策は2種類に分けられる
法人が納めるべき税金を低くするためには、適切な節税対策を行う必要があります。節税の方法は「繰延型節税」と「永久型節税」という2つに大きく分けられます。
繰延型節税
繰延型節税とは「税金の支払いをあとの年度に先送りする」という形で実施する節税方法です。現在の課税所得を減らしたり、損失を翌年以降に繰り越したりすることで、将来の利益と相殺して現在の税負担を減らします。なお、トータルで支払う税金は変わりません。
永久型節税
対する永久型節税は「永久的に税金の支払いを減らす、または発生しないようにする」という節税方法です。非課税の所得を得る、税額控除を活用するなどして、課税所得を恒久的に減少させます。節税対策を考える際は、その方法がどちらの型に当てはまるのかをしっかり理解したうえで実行することが大切です。
法人におすすめの節税対策20選
こちらでは、法人におすすめしたい節税対策を20個厳選してご紹介します。繰延型と永久型に分けてまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
[繰延型の節税方法]
- 決算賞与を支給する
- 設備投資を行う
- 日本型オペレーティングリース取引(JOL)を活用する
- 未払金や未払費用を計上する
- 赤字を繰り越す
- 決算期をずらす
- 共済制度を活用する
- 法人保険に加入する
[永久型の節税方法]
- 役員報酬を増やす
- 旅費や交通費を支給する
- 備品を購入する
- 不要な在庫や固定資産を処分する
- 取引先との飲食費や交際費を経費計上する
- 減価償却資産を一括で処理する
- 福利厚生を充実させる
- 社用車を導入する
- 役員や従業員の自宅を社宅扱いにする
- 税制優遇制度を活用する
- 分社化する
- 資本金額を見直す
①決算賞与を支給する
決算賞与とは、会社が決算(期末)時に利益が出ている場合に社員へ支払う特別ボーナスです。会社は決算期末前までに賞与の支給日を確定・通知し、決算日の翌日から1ヶ月以内に社員へ支払うという2つの条件を満たせば、当期の決算の際に費用として計上することが可能になります。
当期の利益が減少するため、法人税などの負担が減りますが、翌年度に実際に決算賞与を社員へ支払った時には経費にできませんので、翌年度の利益も考慮して実行する必要があります。
②設備投資を行う
中小企業者が指定期間中に新品の設備を購入した場合、特別償却が適用されます(中小企業投資促進税制)。償却限度額の上限は基準取得価額の30%程度、税額控除限度額は7%です。
③未払金や未払費用を計上する
決算日までに費用が未払いとなっていても、サービス提供が完了している場合には、その未払金や未払費用は当期の経費として計上できます。例えば、料金後払いで売った商品の原価、給料、固定資産税などが挙げられます。
④赤字を繰り越す
法人でその年度が赤字の場合、青色申告を行う際にその赤字金額(欠損金額)を最大で10年繰り越すことが可能です。翌年以降に黒字になった場合には、繰り越した赤字金額と相殺できますので、法人税などの節税となります(欠損金の繰戻しによる還付の請求が可能)。
⑤決算期をずらす
決算期をずらすことで事業年度が変更となり、課税を来期へ繰り延べることが可能になります。例えば、3月が決算期の会社が2月へ変更した場合、3月分の売上は翌事業年度分となるのです。最終的には翌年にその税金を納めることにはなりますが、資金繰りが難しい年度には有効な節税方法だといえるでしょう。
⑥共済制度を活用する
「中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)」は、独立行政法人の中小企業基盤整備機構が運営している共済制度です。取引先事業者が倒産した場合に、あおりを受ける中小企業の連鎖倒産・経営難を予防する役割を担います。その掛金は、全額が損金または必要経費として計上できます。
⑦法人保険に加入する
法人の生命保険に加入した場合、契約内容によっては、その支払保険料を損金として計上することができます。例えば、社長を被保険者、保険金または給付金の受取人を法人とした法人保険に加入した場合などが当てはまります。
⑧日本型オペレーティングリース取引(JOL)を活用する
JOLとは、SPCと呼ばれる航空機や船舶等のリース会社に出資して、売却益などのキャピタルゲインが期待できる商品のことです。その出資金は全額経費として計上できるため、節税になります。ただし出資金が後日戻ってきた場合には、「収益」となりますので注意しましょう。
⑨役員報酬を一定額に維持する
役員の給与やボーナスなどは、毎月一定額を支給する場合のみ、損金に計上することが可能です。会社の業績が上がったからと役員給与もアップしたり、逆に低迷したからと役員給与を下げたりした場合には、損金に算入することが認められていませんので注意しましょう。
⑩旅費や交通費を支給する
出張費や交通費については、通常必要とされる費用であれば、会社の損金として計上可能です。
⑪備品を購入する
10万円未満の備品や消耗品の購入費は、その全額を当期の必要経費として計上可能です。こちらは決算前に行える永久型節税の方法だといえます。
⑫不要な在庫や固定資産を処分する
過剰な在庫のためにレンタルスペースを借りていたり、不要な固定資産を所有していたりすると、無駄な維持費が発生します。不要な在庫や固定資産がないか、決算前などに定期的にチェックして、メンテナンス費の節約につなげましょう。
⑬取引先との飲食費や交際費を経費計上する
取引先への接待費や飲食代などは、事業の必要経費として計上できます。
ただし交際費として認められる範囲や、対象となる法人区分が決まっていますので注意しましょう。
⑭30万円未満の減価償却資産を購入して損金として一括で処理する
通常10万円以上20万円未満の減価償却資産は、購入金額の3分の1を3年に分配して必要経費に入れる形になります。
ただし青色申告を行う中小企業者や個人事業主で一定の要件を満たす場合、30万円未満の減価償却資産の購入費を全額損金に一括算入することが可能です(合計額300万円まで)。パソコンの購入など、決算前に駆け込み節税として使える方法です。
⑮福利厚生を充実させる
社員の慰安のために行われる旅行や運動会、社員の健康チェックのために毎年行う健康診断費などの福利厚生費は、一定条件のもとで経費と認められます。社員旅行を制度化したり、健康診断を実施したりすることで節税につながります。
⑯社用車を導入する~普段から行う永久型節税
社用車を導入した場合、車両の購入費や業務に使用する際のガソリン代、修理代などを経費として計上できます。経営者の自家用車を社用車に転用した場合には、未償却残高を基礎にして業務用としたあとの減価償却費を経費に充てることが可能です。
中古車を社用車として導入する場合も同様に節税効果があるうえ、初期費用を抑えることができるのでおすすめです。
⑰会社名義で賃借した住宅を従業員へ社宅として貸し付ける
法人名義で借りた賃貸住宅を従業員へ社宅として貸し付けることで、賃貸料相当額を経費にすることができます。会社の近くの物件にすれば、通勤負担が軽減され、業務の効率化も望めます。
ただし賃料が安すぎる場合には課税される場合がありますので注意しましょう。
⑱税制優遇制度を活用する
国が設定している特別控除を活用した節税対策も、適用されるかしっかりと押さえておきたいところです。中小企業投資促進税制での特別控除では、トータルでの節税が期待できます。一方、設備投資の項目でご紹介した特別償却では、設備投資への投下資金を早く回収できますので、ケースバイケースで選択すると良いでしょう。
⑲分社化する
会社の規模が大きくなったら、分社化することで消費税や法人税などの節税につながります。ただし事務作業や手続きの負担は2倍になります。同族グループ会社内の取引は税務調査でもチェックされることが多いですので、正確できちんとした事務処理を行うようにしましょう。
⑳資本金額を見直す
資本金額を見直すことで法人税率が下がったり、中小企業経営強化税制の適用で税額控除を受けたりすることができますので、節税対策につながります。
ちなみに法人税率は資本金1億円以下で課税所得が800万円以下の部分に対しては15%、800万円超の部分は23.4%がかかります。資本金が1億円超の企業の場合、課税所得額にかかわらず23.4%となります。
法人の節税対策における注意点
ご紹介したように、法人の節税対策にはさまざまありますが、実際に進めていく際には次の3つの点に注意しましょう。
自社にとって意味のある節税対策なのかを確認する
ただ税金を減らすというだけでなく、事業の効率化や収益の向上にも役立つなど、自社の成長につながる節税対策かどうかを確認して実行しましょう。
過度な節税対策をしないように注意する
節税のためとはいえ、手元の資金が不足したり、事業の安定性が損なわれたりするような対策は避けましょう。節税対策を実行する前に、倒産に少しでもつながるようなリスクはないほうが安全です。
ルールに沿って適正な会計処理を行う
税法に違反するような節税対策は、あとで追徴課税を支払うことになるなど、大きなペナルティを背負う可能性があります。適正な会計処理を行いつつ、ルールを守って節税を進めていくことが大切です。
まとめ
法人の節税対策には、税金の支払いを先送りする「繰延型」と、税金を永久に減らす「永久型」の2種類があります。決算賞与、設備投資、未払金計上など、経営状況に応じて適切な方法を選び、節税効果をアップさせましょう。
ただし過度な節税はリスクをともないますので、自社にとって有益な対策かどうか、法律に沿って適正に行っているかどうかを常に確認することも大切です。
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