個人事業主として開業を検討している方のなかには、資金面でお悩みの方も多いのではないでしょうか?
開業資金は、少なすぎると適切な投資ができず、多すぎると後の負担になってしまいます。適切な金額、調達方法を選び、事業の良いスタートを目指しましょう。
今回は、個人事業主の開業資金について、金額の目安や調達方法、注意点などを詳しく解説します。
個人事業主の開業資金はいくら必要?
個人事業主の開業資金の目安、必要な費用の内訳を解説します。
開業費用は「500万円未満」が4割以上を占めている
「2023年度新規開業実態調査」によれば、開業費用の構成比は以下のとおりです。
【開業費用の構成比】
250万円未満 - 20.2%
250万円~500万円未満 - 23.6%
500万円~1,000万円未満 - 28.4%
1,000万円~2,000万円未満 - 18.8%
2,000万円以上 - 9.0%
250万円未満が20.2%、250万円~500万円未満が23.6%と、500万円未満が全体の約4割を占めています。中央値も約550万円という結果が出ており、長期的にも少額化している傾向があります。
ただし、上記はあくまで統計的な目安にしか過ぎません。実際の開業費用は、事業内容により大きく異なります。事前の調査や計画に力をいれ、できる限り正確な開業費用を算出しましょう。
開業に必要となる費用の内訳
開業には初期費用のほかに、事業を運営するための「運転資金」が必要です。店舗や事務所を構える場合、初期費用と運転資金の内訳としては、以下のようなものが考えられます。
【開業に必要となる費用の内訳】初期費用
・敷金 / 礼金 / 保証料
・リフォーム費
・機械 / 設備の導入費
・備品の購入費
・通信回線などの工事費
・チラシ・ホームページなどの制作費運転資金
・家賃
・人件費
・仕入れ代金
・借入金の返済費
運転資金は最低でも3ヶ月分、仕入れが必須の飲食店などなら6ヶ月分は用意しておきましょう。
開業資金を調達する方法
開業資金の調達には、以下のような方法があります。
<開業資金を調達する方法>
・日本政策金融公庫の創業融資
・制度融資
・国や自治体の補助金・助成金
・ビジネスローン・親族や知人から借入をする
・クラウドファンディング
それぞれの内容を詳しく解説します。
① 日本政策金融公庫の創業融資を活用する
日本政策金融公庫は政府全額出資の金融機関であり、民間銀行から融資を受けにくい方を支援することで、地方の活性化や農林水産業の発展、新規事業のスタートアップなどを目指しています。さまざまな支援制度のなかでも、税務申告を2期終えていない方限定で受けられるのが、スタートアップを支援する「創業融資」です。
長期返済が可能なほか、一律0.65%の利率引き下げも受けられ、担保や保証人もいりません。35歳未満・55歳以上・女性など、条件を満たす方には、さらに特別な支援制度も用意されています。
② 制度融資を活用する
制度融資とは、中小企業や個人事業主がスムーズに資金調達できるよう、地方自治体が主催している制度です。信用保証協会を保証人として間にいれることで、金融機関からの融資を受けやすくしてくれます。
開業資金の融資も比較的通りやすいものの、その分信用保証協会に保証料を払う必要があります。関わる団体が多く融資までに時間がかかるため、余裕をもって早めに申し込みましょう。
③ 国や自治体の補助金・助成金を活用する
国や自治体の補助金・助成金は、融資とは異なり返済の必要がありません。補助金は応募時期・件数が決まっており、助成金は応募要件が決まっています。あてはまるものがないか調べ、積極的に活用しましょう。
④ ビジネスローンを活用する
ビジネスローンとは、金融機関や消費者金融などが運営する、事業資金専用の融資のことです。金利は高めに設定されているものの、審査完了までが早く、担保や保証人も原則必要ありません。
⑤ 親族や知人から借入をする
親族や知人からの借入も、資金調達のひとつの手段です。ただし、借用書がない、返済が滞っている、無利子などの場合は、全額または一部が贈与税の対象となることがあります。
後々トラブルにならないよう、しっかりと内容を書面化しておきましょう。
⑥ クラウドファンディングを募る
クラウドファンディングとは、インターネットを通じて事業内容を紹介し、一般消費者から少しずつ資金調達する方法です。寄付してもらうほか、お返しとして商品や特典などを渡す方法があります。
クラウドファンディングを集めた「クラウドファンディングサイト」を利用すれば、簡単に多くの消費者にアピールできます。しかしその分、集まった金額の何%かを手数料として払わなければなりません。
開業資金を融資で調達する流れ
開業資金を融資で調達する流れは、以下のとおりです。
<開業資金を融資で調達する流れ>
(1) 融資を申し込む >> (2) 必要書類を用意する >> (3) 担当者と面談を行う >> (4) 融資審査が行われる >> (5) 指定口座に入金
なお、制度融資を利用する場合は最初に地方自治体に申し込み、金融機関経由で信用保証協会に保証を願い出る必要があります。
開業資金を調達する際の注意点
開業資金を調達する際には、以下の点に注意しましょう。
<開業資金を調達する際の注意点>
・融資額は可能な限り抑える
・スケジュールに余裕をもって計画的に準備する
・開業届の提出、確定申告をしっかり行う
・生活するうえで必要な資金を確保する
それぞれの内容を詳しく解説します。
融資額は可能な限り抑える
言うまでもないことですが、融資は受けた分だけ、利息をつけて返済しなければなりません。利息という余分な費用が発生するうえに、返済により事業の方向性が縛られることも考えられます。
開業資金に多少の余裕は必要ですが、融資額は可能な限り抑えておきましょう。
スケジュールに余裕をもって計画的に準備する
融資を申し立ててから実際に借りるまでには、平均1ヶ月程度の時間がかかります。また、審査を通過するためには、詳細な計画を立てておかなければなりません。
後から困らないよう、スケジュールに余裕をもって、計画的に準備を進めておきましょう。
開業届の提出、確定申告をしっかり行う
開業届や確定申告書は、多くの融資審査で提出が求められます。ルールに従って提出や申告を行い、控えやコピーを取っておきましょう。
生活するうえで必要な資金を確保する
事業がすぐには上手くいかない場合も、個人事業主とその家族の生活は続いていきます。余裕をもって事業に取り組むためにも、生活するうえで必要な資金は、開業資金とは別に確保しておきましょう。
まとめ
個人事業主の開業資金は、事業内容により異なるものの、500万円未満が相場と言われています。資金調達には、日本政策金融公庫の創業融資、制度融資、国や自治体の補助金・助成金、ビジネスローンなどを活用しましょう。
生活費を別で確保したうえで、できるだけ融資額を抑えることが大切です。