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Appleのプライバシー保護の取り組みとこれからの企業の在り方
プライバシー

Appleのプライバシー保護の取り組みとこれからの企業の在り方

ライター  大谷和利
2020
01
28

GDPR施行初日に提訴された世界的企業

2018年5月25日、GDPR(一般データ保護規則)が施行された当日に、世界的な大企業4社が、それを侵害しているとして、提訴されました。その4社とは、Google、Facebookとその傘下のInstagram、WhatsAppです。

提訴したnoybはプライバシー保護を目的とする非営利団体で、その名は”none of your business”(=干渉するな)という英語の決まり文句の略から採られました。この団体の代表で弁護士でもあるマックス・シュレムス氏は「個人情報取集に関して、ユーザーが同意ボタンを押すか、アカウントを削除するかのどちらかを選ばなくてはならないサービスは、北朝鮮の選挙と同じ」とまでいっています。

ユーザーから収集した様々なビッグデータを基に広告代理店的なビジネスを展開するそれらの企業が、実際にどこまで自らを律せられるかは未知数です。しかし、4社は、いち早くGDPRに準拠することを表明しました。それは、そうした姿勢を見せなければ、ビジネスが立ち行かなくなることを認識しているからに他なりません。

一方で、先日、AppleのCEO、ティム・クックが来日して、Apple Storeを訪問したり、映画「シン・ゴジラ」の樋口真嗣監督と談笑する様子が報道されましたが、日本のメディアからの取材でも強調していたのが、プライバシーの問題でした。日本テレビのインタビューでは「今よりも、もっと一貫性のあるプライバシー関連の規制が必要」とさえ発言しています。

日本でも来年には個人情報の取り扱いを厳格化する法案が国会に提出されますが、民主国家であれば、この動きは強まりこそすれ、もはや弱まることはありえません。もちろんAppleもビジネスですから、プライバシー保護の動きが加速すればするほど、自社にとって有利な状況になることを見越して、クックもそのように主張しているのです。      

               

万全に万全を重ねてプライバシーを守る

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もちろん、そういうからには、どこを突かれてもホコリが出ないようにしておく必要があります。以前よりCMなどでもプライバシー保護の立場を明確に打ち出していたAppleは、最近になって同社の個人情報の取り扱いについて解説した「プライバシー」ページを刷新。純正アプリとサービスに関するプライバシー保護機能のポイントについての説明を盛り込みました。

たとえば、「追跡者からあなたを守る」という純正ブラウザのSafariの説明では、デバイス上の機械学習機能を使って、追跡型広告をブロックする「インテリジェント・トラッキング防止機能」を実現したとしています。また、ユーザーのブラウザ設定(フォントやプラグインの構成など)からデバイスの指紋ともいえる情報を作成して広告表示に利用する「フィンガープリント」の防止機能も備えたとのことです。

あるいは、Google Map上で診療所の検索や、特定の病院に向かうナビゲーションが頻繁に行われれば、ユーザーが何らかの疾患にかかり、治療を行っていることまで把握されてしまいます。しかし、純正のマップならば、一切の検索結果や目的地はAppleに知られることなく、愛車の駐車場所などの個人的な位置情報もデバイス上のみの記録に留められ、経路などもAppleIDなどと紐付けされることなく、ランダムな識別子を用いて関連づけられるのです。

さらに、画像認識などの処理を高速に行えるニューラルエンジンを純正CPUのA13に内蔵することで、写真データをクラウドにアップロードしなくても顔や撮影場所の認識が行える仕組みを備えるなど、ハードウェアとソフトウェアを統合的に開発しているメリットも活かされています。

お金に関係する部分では、どうでしょうか? Walletに登録されたクレジットカードやプリペイドカードの番号は、Apple自身も加盟店も知ることができません。そして、Apple Payによるユーザーの購入記録(品名、価格、場所など)をAppleが保存・販売・使用することもないのです。

ヘルスケアデータについても同様ですが、対するGoogleは、米国第2の医療団体Ascensionとの提携プログラム「Project Nightingale」を通じて、数千万人分の患者の氏名や生年月日、検査結果、医師の診断、入院記録などを当事者たちの同意なしに収集していたことが、The Wall Street Journalの手で明らかにされました。

その結果、Googleが買収したウェアラブルなフィットネストラッカー、Fitbitのユーザーの中で、Apple Watchへの乗り換えを検討する声が強まるなど、自分のデータを何に使うかわからない企業には渡したくないと考える消費者の数は日に日に増えている状態です。

「倫理および人道最高責任者」を設ける企業も

もしも、Appleが純正アプリで収集可能な情報を自社の利益のために利用すれば、iPhoneやApple Watchの販売台数から考えて、同社は今の何倍もの富を得ることができるでしょう。しかし、そうしないのは、「個人情報は個人のものである」という確固たる信念を持ち、コストがかかってもユーザーが不安なく使える情報環境を整えることが、最終的にビジネスの継続性につながると考えているからです。

一般企業が今後とも顧客を維持・拡大していくためには、自社のプライバシー保護への取り組みを明文化して公表し、それを実際に履行していくことが求められます。そして、その先には以下のような事例すらあるのです。

クラウドベースの顧客関係管理ソリューション企業として知られるSalesforce.comは、2019年の1月に「倫理および人道最高責任者」という新たな役職を設けました。倫理(ethics)の頭文字から、新たな時代のCEOとも称されるこの役職は、本来、中立でありながら、使い方によって善にも悪にもなるテクノロジーが、社会的善として利用されるように管理することを目的としています。

その中には、当然、プライバシーを侵害しないサービスのあり方も含まれており、まさにAIのビジネス利用が本格化して来た時代に相応しい対応といえるでしょう。

企業にとっての顧客のプライバシーの保護、それは、夏休みや冬休みの宿題と似ています。つまり、やり遂げたことで褒められるのではなく、やり遂げて当たり前、できなければ補講や落第点が待っているような種類の課題なのです。           


マネーツリーは「お客さまのデータはお客さまのもの」をポリシーに掲げ、ファイナンスアプリとしては国内初のプライバシー認証機構である TRUSTe を取得しました。お客さまのプライバシーを重視した理念のもと、明示的な説明の上、お客さまの同意を得て、お客さま主導のデータポータビリティを実現しています。マネーツリー のプライバシーポリシーについて詳しく知りたいかたはマネーツリー の安全性についてお読みください。              

筆者プロフィール

ライター  大谷和利

テクノロジーライター,AssistOnアドバイザー,自称路上写真家。Macintosh専門誌, デザイン評論誌, 自転車雑誌などの誌上でコンピュータ,カメラ,写真,デザイン,自転車分野の文筆活動を行うかたわら,製品開発のコンサルティングも手がける。

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