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利用者のプライバシー保護の変化によるデータ利活用 | プライバシーゴーグル
プライバシー

利用者のプライバシー保護の変化によるデータ利活用 | プライバシーゴーグル

CEO: ポール チャップマン
2022
08
30

こんにちは、マネーツリー代表取締役のポール チャップマンです。

ゴーグルを身につけるように、プライバシー重視の視点から日本市場に役立つプライバシーに関する情報を公開していくブログシリーズ、プライバシーゴーグル。

2019年9月にFIN/SUMで開かれたセッションでは、マネーツリーを含む3社がオープンAPIにより金融データが解放されたことからデータ利活用の重要さと、EUのGDPR (General Data Protection Regulation: 一般データ保護規則)の日本への影響やデータ利活用とプライバシー保護のバランスについて話しました。(詳細はFIN/SUMイベントレポートをご覧ください。)

あれから2年半が経ち、データ利活用とプライバシー保護の取り組みは大きく変わりました。この変化から、データ利活用に取り組んでいる企業は何に気をつければいいのかについて解説したいと思います。

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この数年のデータ利活用とプライバシー保護の変化

2019年11月以降、国内や海外でデータ利活用とプライバシー保護関連の取り組みに変化がいくつかありました。ここでは4つの大きな変化を取り上げたいと思います。

  1. オルタナティブデータの拡大
  2. ATT(アプリ追跡透明性)の導入
  3. 個人情報保護法の改正
  4. 脱クッキーへの移行

1. 国際的なデータ利活用手法の一つ、オルタナティブデータの拡大

海外のオルタナティブデータの市場規模はすでに1,700億円(データ購入予算)ですが、日本での活用はまだ一部の金融機関に限られており、これから広く活用されることが期待されている市場です。

2021年2月に一般社団法人オルタナティブデータ推進協議会が設立され、マネーツリーも加盟しており、国内において利用者に信頼されるデータ利活用を進めるため、健全なエコシステムの形成を支援しております。

データ利活用の手法が増えて、普及することで今まで眠っていたデータの可能性が広がると思います。(オルタナティブデータについて興味のある方はブログをご覧ください。)

2. iOS上でデータトラッキングの許諾を管理するATT(アプリ追跡透明性)

2021年4月にアップル社がApp Tracking Transparency(アプリ追跡透明性、以下「ATT」機能を有効にしたことによりiOSアプリの提供者は利用者の同意を取得することが義務付けられました。つまり、アプリ利用者は自らデータ共有のコントロールができるように変わったのです。(詳しくは「iOS上でのアプリ市場を変えるATTとは」をご覧ください)

アプリ分析プラットフォーム、「Adjust」が公開したモバイルアプリトレンドレポート2022年によると、ATTのオプトイン率は当初の16%から一年で25%に上昇しました。パーソナライズされた広告のメリットが認識されたことが理由と予想されています (出典)。

このように、企業がプライバシー保護を後押しすることで、利用者のデータプライバシーのリテラシーが高まっているように感じます。

3. 個人情報保護法の改正、データオーナーの権利保護を強化

GDPRや企業の動き以外に、国内でもデータ利活用とプライバシー保護関連の取り組みの変化として、2022年4月1日に改正個人情報保護法が施行されました。

この改正では、利用者が保有する個人データの利用停止・消去・第三者への提供の停止を請求できる要件を緩和し、本人の権利保護がより強化されました。それにより、利用者のデータを取り扱う企業も対応が求められ、2021年末から2022年4月までに国内の数々の企業がプライバシーポリシーを改正個人情報保護法に対応する形に更新しています。(詳しくは前回のプライバシーゴーグルブログ記事をご覧ください。)

4. ついに日本でもはじまる、脱クッキーへの移行

GDPR が2018年5月25日に施行以来、EUだけでなく、世界中で脱クッキー(ウェブサイトやアプリの利用者の同意なくクッキーを付与することを禁じる動き)の動きは強まる一方です。

2020年3月にはアップル社のウェブブラウザー「Safari」でサードパーティクッキーの受け入れを拒否し、2022年7月27日にはGoogle社のウェブブラウザー「Chrome」でサードパーティークッキーのサポート完全廃止を2024年の後半を目処に開始することを発表しました(出典)。

プライバシー保護のコントロールは企業から利用者へ

買い物、バンキング、仕事や交流など、コロナ禍で加速した人々の生活のオンライン化は便利な一方で、心配になるのはいつどこで誰が何の目的でデータを利用し、不要になった時はきちんとデータが消去されるのかということです。

これまでのデータエコノミーは、インターネットのメガプラットフォーマーたちが作り上げてきたものでした。そこでは企業が魅力的なサービスを提供しつつ利用者の個人情報を取得し、集まってきた利用者の個人データを利活用してマネタイズしていくという流れが当たり前でした。当時のデータ利活用とプライバシー保護のバランスは、例えていうならば企業のデータ利活用が99パーセント、利用者のプライバシー保護が1パーセントというような世界だったのです。

アップル社のATT、「Chrome」でサードパーティークッキーのサポート完全廃止開始へ向かう動きや、個人情報保護法の改正などの流れにより、企業のデータ利活用99パーセント、利用者のプライバシー保護が1パーセントという世界から、近年の様々な変化により利用者のプライバシー保護のバランスがフェアになりつつあるように思います。

利用者のプライバシー保護を重視するからこそ、見えるチャンス

利用者のプライバシー保護や、どんなデータがいつ誰にどのように利用されるのか、というコントロールが、この数年で企業から利用者へとシフトしています。

アップル社はATT機能を追加したからといって広告に反対しているわけではなく、自社のプラットフォームで広告事業を展開しています。調査会社オムディアの推計によると、2021年のアップル社の広告事業売上は約40億ドルとなっており、2020年の売上と比較すると200%以上の伸びを記録したようです。つまり、広告事業の利益が単純に多いというわけではなく、利用者の同意を取得した企業・広告事業者にはビジネスチャンスがあるということです。これはアップル社以外にもアマゾン社が成功している分野です(2021年のアマゾン社の広告事業の年収は約310億ドル)。

その一方で、データを使い個人向けの広告を販売するフェイスブックの親会社であるメタプラットフォームズはアップル社のプライバシー規約変更で100億ドルの負担が生じるとの見通しを示しました(出典)。

この数年でサードパーティデータ(第三者からデータを購入することや、利用者の同意なしにデータトラッキングされたデータ)を利用するのではなく、ファーストパーティデータ(企業が利用者の信頼と同意を得た上で利用者から直接取得したデータ)を利活用することや、分析ツールの導入が重要になってきます。

今のデータ利活用に不可欠なプライバシー重視のファーストパーティデータ

どのようなデータを取得し、どう利活用するかで企業の差別化につながりますが、重要なのは、そのデータをどのように取得するかです。

企業が取得したファーストパーティデータの他に多様な利用者のデータを集約し、利用者の全体像を把握しやすくなるCustomer data platform (CDP)ツールを活用する場合は、利用者のデータの取得方法を明確にすることをおすすめします。

マネーツリーが提供している金融データプラットフォーム「Moneytree LINK」は、2,500社以上の金融機関・カード会社・電子マネー等、金融サービスを提供する様々な企業と連携し、画一化されたフォーマットで統一したデータをクライアント様のプロダクトへ連携しています。

電子決済等代行業者であるマネーツリーは利用者の同意のもと、Moneytree LINKを通じて企業へ金融データ連携しています。各企業に対してどのようなデータを共有するかは利用者自身が決められる仕組みです。

利用者の同意や連携プロセスにご興味のある方は連携画面も記載されているこちらの記事をご覧ください。

企業が適切な形で同意を取りながらデータを有効活用することで、利用者が充実感を得られるサービスを提供し、利用者主導のデータポータビリティを実現する、公平なデータエコノミーの構築に努めています。

また、他にも電子決済等代行業者はいますが、マネーツリーのユニークな点は黒子役に徹しているところです。純粋なプラットフォーマーとして、サービスを提供する企業とバッティングすることなく、イノベーションを支援するために利用者のプライバシーを重視し安全にデータ利活用ができる金融データ連携を実現しています。

さらに2021年4月にはMoneytree LINK導入企業様の利用者の中で、明示的に情報共有に同意した利用者の金融データ活用をサポートするツール、「LINK Intelligence」の提供を開始しました。利用者のデータを可視化し、抽出やCDPなどの外部のデータベースに自動連携することで利用者のプライバシーを守りながらMoneytree LINK導入企業様の金融データ利活用を支援しています。

フェアなデータエコノミーが主流な世の中に

4−5年前のように利用者の同意なしにデータ利活用する時代は終焉を迎えているように思います。

大手企業は自らルールを変え、プライバシーを守りながら利活用するファーストパーティデータを基に、公平なデータ利活用を進めることで利用者、企業、投資家もwin-win-winな環境を作り上げました。

アップル社やアマゾン社のような大手企業でなくても、利用者の信頼を得て、きちんと同意を取得した上でデータ収集することが鍵です。CDPなど多様なデータソースを連携する際も、明確に利用者の同意を取得してデータ収集している企業とパートナーを組むことで利用者にとっても最適なデータ利活用が実現できます。

これからもマネーツリーは、プライバシーリテラシー向上の一助となるべく、プライバシーバイデザインに基づいた金融データプラットフォーム「Moneytree LINK」や資産管理サービス「Moneytree」の提供のほか、定期的にこの「プライバシーゴーグル」ブログシリーズでプライバシーについて発信していきます。

利用者のプライバシー保護とデータ利活用のバランスがある事業展開についてご興味のある方はこちらからお問い合わせお願いします。

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プライバシーゴーグルを読む

第四回:改正個人情報保護法をチャンスに。企業が取るべきアクションとは

第三回:プライバシー視点から考える、もっと前に進むためのパートナーシップ

第二回:iOS上でのアプリ市場を変えるATTとは

第一回:ニューノーマルでのプライバシーを尊重する施策

筆者プロフィール

CEO: ポール チャップマン

マネーツリー株式会社の創業メンバーであり、代表取締役。2000年にSaaSスタートアップ「cvMail」を設立後、Thomson Reutersに売却。その後en world JapanでIT部長を勤め、2009年よりアプリ制作に着手。2012年にマネーツリー株式会社を設立、翌年より個人資産管理サービス「Moneytree」の提供を開始。日本と母国オーストラリアにおける金融データポータビリティーのビジョンの展開にも取り組む。好きな言葉は「七転び八起き」で、趣味ははエクササイズや子供との時間。

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