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結婚届けから選挙の不正防止まで、ブロックチェーンの意外な使われ方
セキュリティ

結婚届けから選挙の不正防止まで、ブロックチェーンの意外な使われ方

ライター  大谷和利
2019
09
30

今、ビジネス界はデジタル技術による大規模な変革、すなわちデジタルトランスフォーメーション(DX)の真っ最中。今回は、暗号通貨の基本技術でもあるブロックチェーンを身近な暮らしの中で応用しつつある企業や組織の意外な取り組みを紹介しよう。      

               

問題があるからこそ進む改革


デジタルトランスフォーメーションに限らず、改革というものは、現状の制度やシステムが問題を抱えているときにこそ、大きく前進するものです。

たとえば、日本のキャッシュレス化が他国に比べて遅れがちな1つの理由は、偽札が少なく現金を信用できる社会だから、といわれています。運営上の問題が少ないために、消費者もお店も安心して使い慣れた現金を利用してしまうわけですね。

また、今年10月からの消費税率アップへの対応で、小売店は商品カテゴリーによって異なる税率に対応できる複数税率対応レジの導入に追われており、納品が間に合わないケースも出ています。これなども、タブレットベースのPOSレジならば今後の税率変更にもアプリのアップデートで対応できるので、現在の混乱が、小売店のデジタル化を後押しする契機になるかもしれません。

余談ですが、デジタルトランスフォーメーションの略称が、なぜ"DT"ではなく"DX"なのか、疑問に思う方もあるでしょう。実は、英語では、transferをXfer、transmitをXmitのように、transをXと表記することがあり、それに則った略称となっています。

DXの基本は、企業があらゆる情報をデジタル化して蓄積し、それらを自在に融合してデータに基づく経営戦略が採れるように組織のあり方を変えていくことにあります。そのためにも蓄積されたデータの正統性が重要となり、不正な改変を受けにくいブロックチェーンのような電子台帳技術が注目されているのです。

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国家や宗教に左右されない結婚届


かつての名テニス・プレーヤーで、全仏オープン4連覇、ウィンブルドン5連覇、4大大会通算「11勝」などの記録を持つスウェーデンのビョルン・ボルグゆかりの社名を持つ同名のスポーツウェア会社は、無償の社会貢献的なサービスとしてブロックチェーンベースの"Marriage Unblocked"を立ち上げました。

これは、同性婚が認められていない地域や、宗教上の理由で結婚が許されない人々を含めて、あらゆる人が、国家や宗教に依存しない結婚届をオンラインで作成・登録できるというものです。

このサービスでは、何らかの権威の下で結婚したという証拠を残すのではなく、その事実を、純粋かつ永遠に記録しておきたいというカップルのためにブロックチェーンが使われていることになります。


デジタル選挙の不正防止


日本を含む先進国でも、票の買収工作など選挙関連の不正は後を絶ちませんが、国や地域によっては、特定の政党や候補者に有利な結果をもたらそうとして得票数のデータそのものが改ざんされるという事態すら起こっています。

これに対し、たとえば、Democracy EarthというNPO団体が開発したSovereign(「主権を持つ」、「独立した」の意)というブロックチェーンベースの電子投票システムを公開し、誰もが投票のための組織を立ち上げて、規模を問わず公平で改ざんのない選挙を行うためのプラットフォームを構築しました。

現状では、まだ社会実験的なところもありますが、実際に機能するこのようなサービスが認知されていくことで、やがてはこのような仕組みが投票システムの核となる時代が来るものと思われます。

労働者の権利保護


今は、企業に対して事業や雇用関係の透明性や契約履行の証明などが、いつの時代よりも強く求められています。こうした流れに対応すべく、飲料メーカーのCoca-Colaは、約30ヶ国に及ぶ同社のサプライチェーンを通じて労働環境を調査し、2020年までに労働契約書をブロックチェーンベースのものに置き換え、それを米国務省と共有する計画を明らかにしています。

これにより各国の労働基準規則とは独立して自社の就労ポリシーを徹底させ、サプライチェーンの末端に至るまで労働環境をしっかり監督することで、社会的に正しいビジネスを行う企業であることを広く認知してもらう狙いがあるといえるでしょう。

銃の所有者トラッキング

銃規制問題は常に話題を集めますが、様々な関係者の利害や思惑が重なり、特にアメリカ合衆国のような国では、一気に所有の規制に向かえないのが現状です。次善の策として、銃の所有者や売買の情報を厳格に管理・監視して、愉快犯や反社会組織などの手に渡らないようにすることが精一杯の対応かもしれませんが、それが徹底されれば、今よりは銃関連の犯罪を減らせる可能性は少なくありません。

すでに、Blocksafeというスタートアップが、ブロックチェーンでサプライチェーンの段階から銃の製造と売買をトラッキングし、IoT技術と組み合わせて、発砲の記録や遠隔機能停止などが行えるシステムを開発しています。しかし、これは1社の努力だけで解決する問題ではなく、ライフル協会や販売者の団体などの協力なしには効果を発揮することができないのが残念なところです。

それでも、アメリカ合衆国では銃弾で亡くなる人が他の先進国の平均の25倍も多いことを考えれば、そろそろ、こうしたシステムの導入を考えるべきときにきていることは明白といえます。

正しい医薬品の販売


これも日本ではほとんど考えられないことですが、国によっては医薬品の偽造や水増しが犯罪組織の収入源になっている場合があります。それだけでも問題ですが、対象物が医薬品であるだけに、投薬で治る病気が治らなかったり、最悪の場合には死に至る健康被害につながる恐れもあるわけです。

ドイツの化学品・医薬品メーカーであるMerckは、ブロックチェーンを活用した薬品のトラッキングシステムをテスト中で、これが軌道に乗れば、より安心して医療を受けられる環境が整うものと期待されています。

まとめ


著名な思想家でデザイナーだったバックミンスター・フラーは、人類に対し、「どうすれば、エコロジーを破壊せず、誰の不利益にもならない方法で、100%の人間性にあふれた世界を、即時協力を通じて最短の時間で作り出せるだろうか?」という疑問を生涯にわたって投げかけました。

ここに挙げたような事例を見れば、その鍵の一部は、確実にブロックチェーン技術が握っているといってよいでしょう。ブロックチェーンは、あなたが知らないうちに、暗号通貨以外の分野でも、社会のために役立ち始めているのです。

筆者プロフィール

ライター  大谷和利

テクノロジーライター,AssistOnアドバイザー,自称路上写真家。Macintosh専門誌, デザイン評論誌, 自転車雑誌などの誌上でコンピュータ,カメラ,写真,デザイン,自転車分野の文筆活動を行うかたわら,製品開発のコンサルティングも手がける。

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