2019年3月1日、三井住友銀行は個人に提供している「三井住友銀行アプリ」の大幅なリニューアルを実施した。アプリには新たに家計管理サービスが追加され、その部分にマネーツリーの提供する「Moneytree LINK」が採用されている。Moneytree LINKにより、同アプリ内でSMBCグループ以外の銀行口座や証券口座、クレジットカード、ポイント・マイル、電子マネーなどの金融資産や取引明細も管理ができるようになった。Moneytree LINKは業界トップレベルのセキュリティを誇るAmazon Web Services(AWS)およびHerokuのホスティングサーバーの利用をはじめ、膨大な金融データを安全に保管し、利用者がいつでも安心して利用できるようセキュリティ対策に努めている。
三井住友銀行でサービスのデジタル化やキャッシュレス決済の促進などイノベーション施策を進めるリテールIT戦略部の横田氏は、今回のリニューアルはユーザーの使い勝手の向上を目指して実施したものと説明する。App Storeでの評価も4.6(2019年6月時点)とユーザーの評判は上々のようだ。今回、横田氏にリニューアルのポイントと新しいことに積極的に取り組むリテールIT戦略部の組織作りについて話を聞いた。
リテールIT戦略部の前身ができたのは2015年4月のことです。当時、これからは、個人のお客さまとの取引をデジタル化していくことが極めて重要になる、という共通認識を、上層部も含めて持ってはいたものの、実際の取引はまだまだ支店が中心で、お客さまに来店いただかないとできないことが多い、というのが実情でした。
しかし、デジタルを推進する組織としての注目度も高まり、支店改革の一環として、デジタル化を進めていこうという大きな方針が決まりました。そして、お客さまとのコミュニケーションは「やはりスマートフォンだよね」という話があり、スマートフォンファーストのサービスを作っていくことになりました。それで、これまで提供していたアプリを作り直したり、マネーツリーとも連携して「SMBCネットワークアプリ」の制作などの取り組みを進めたりしました。今回の「三井住友銀行アプリ」のリニューアルは、キャッシュレスの流れが加速したことに加え、2018年より、三井住友カードといろいろな連携をしていくことになったのがきっかけで始まった取り組みです。
今回、「アプリの家計管理機能や当行のデビッドカードをもっと使ってほしい」という想いがあり、様々な機能を実装しています。たとえば、これまでデビットカードの明細にはオーソリデータ(カードで決済可能か確認し、決済枠を確保するための情報)しか表示していませんでしたが、購買情報まで反映できるようにしたり、カードの請求金額に対する残高不足額の通知や家計管理機能を拡充したりしています。
アプリのUI/UXの面では、他の業界に比べると遅れているかもしれません。なので、アプリの開発には銀行のビジネスが分かっている銀行員に加え、SIerから来ている方やUI/UXデザイナーと共同で取り組みました。私たち銀行員だけでは使いやすいアプリを作るのは難しいと思っています。
デザイナーはインハウスのUI/UXデザイナーを採用していて、彼らにはペルソナ作りやカスタマージャーニーの設定を含め、アプリ開発の上流から入ってもらいました。おかげでアプリのUI/UXのディスカッションを密に行うことができています。もちろん必要に応じて上席者とも話をしますが、それ以上に担当者間でよく話をしています。デザイナーは理想形を追い続けてくれるのですが、時々喧嘩になることもありますね。勘定系を利用している背景から、画面をこうしたいと言われても、システム的に「できる・できない」の制約があって、その点に関してはデザイナーもストレスを感じていたかもしれませんが、理想に近いUI/UXを実現することができました。
当部は大手町の本店ビルの中にありますが、数年前から服装を自由にしたりオフィスのレイアウトを変更したりしていて、部内はとてもフラットな雰囲気になっています。一般の銀行や当行の他の部門だと部長席があって、役職に応じて席が並んでいる形のところが多いかと思いますが、当部では座席の配置はバラバラで、部長の部屋も開け放してあります。リテール事業部門の部門長を務める専務に相談するときも、役職にかかわらず話しやすい環境ができています。
フラットな環境のおかげで、スピード感を持って仕事を進めることができています。リテールやデジタルの世界は日進月歩で、これまでの銀行のスピード感でやっていたら間に合わないことが多いと思います。ちょっとしたその間に、スマホのOSが変わってしまいます。
ただ、もともと当行にこのような文化があったわけではないので、組織の文化作りは意識的にやってきたことです。当初7名で始まった当部は、今では外部の人も含めると100人規模にまでなっていますが、今でも当初と同じようなスタイルで取り組みを進めています。
当行のキャッシュレス戦略は「×××Pay」といったペイメントサービスを作りましょう、という路線とは一線を画しています。お客さまが決済の時に何を使うのかというのは、銀行側は決められないと思います。お客さまはシーンに応じて、クレジットカードを使う時もあれば、デビットカードを使う時もあり、プリペイドカードを使う時もある。アプリ開発に際しては、それらを一つのインターフェイスである程度管理できるものを、というのがもともとの発想でした。
なので、当然クレジットカードとの連携もしますし、デビットの買い物明細も見せますし、Apple PayもGoogle Payも連携できるようにしています。すでに一部対応していますが、今後は、利用額コントロールの機能も充実させていきたいです。あらゆる買い物の決済が管理できるのが望ましい形だと考えています。
個人のお客さまが気にするところは、突き詰めると「残高足りるの?足りないの?」なんですよね。銀行はカードなどの請求金額を各社からもらっていて、事前に引き落とし金額が分かっているので、そうした情報をいかに見せてあげるのかというのが大事だと考えています。銀行には、他にもまだうまく使いきれていない情報がたくさんあるように思います。
そしてお客さまにとってアプリを見るのが習慣になれば、今度は収支の管理の方にも目が向くのではないかと考えています。アプリの家計管理機能を見て、「もっとカードを使っても大丈夫かな」と思ってもらえるなら、それは私たち事業者にとってうれしいことです。一方で、「ちょっと使いすぎかな」ということなら、支出をコントロールすることができ、利用者にとってメリットになる。そういう意味で家計管理機能は事業者にも利用者にもメリットがあるものだと思っていますので、開発には力を入れました。
今後は、利用者が、今月はある程度余裕があるな、お金が貯まってきたなと思ったなら、運用の方にも来て欲しい、と考えています。逆に足りなくなったら、リボ払いやローンなどのファイナンスビジネスにも繋げていく、その入り口として、銀行アプリがあると考えています。
口座残高の確認や家計管理機能に加え、振込・振替までできるのが銀行アプリの強みです。銀行アプリは月に1回程度しか見ないのが普通ですが、「三井住友銀行アプリ」はお客さまに日常的に使ってもらえるアプリにしたいと思っています。そのためには、情報提供をきっちりやること、そしてユーザビリティを圧倒的にあげていくことが大事だと考えています。
お客さまに、より一層価値あるサービスを提供し、お客さまと共に発展する。
事業の発展を通じて、株主価値の永続的な増大を図る
勤勉で意欲的な社員が、思う存分にその能力を発揮できる職場を作る。
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