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プライバシー視点から考える、もっと前に進むためのパートナーシップ|プライバシーゴーグル
プライバシー

プライバシー視点から考える、もっと前に進むためのパートナーシップ|プライバシーゴーグル

CEO: ポール チャップマン
2021
10
25

こんにちは、マネーツリー代表取締役のポール チャップマンです。

ゴーグルを身につけるように、プライバシー重視の視点から日本市場に役立つプライバシーに関する情報を公開していくブログシリーズ、プライバシーゴーグル。

数週間前に、弊社のCPO、マークマクダッドがエンベデッドファイナンスについてのブログを公開しました。

Mark’s MIC:フィンテックの追い風、「エンベデッドファイナンス」で前進しようでマークが説明したようにエンベデッドファイナンスは、「「ブランド」と「ライセンスホルダー」のお互いの強みを引き出せるサービスの提供方法」です。UXやクラウド、利用者視点に立ったサービス設計のノウハウを強みとする「ブランド」と、お客さまの金融データを保管し高い信頼性を持つ「ライセンスホルダー」が、マネーツリーのような「イネイブラー」により繋がることで、互いの強みを生かし、付加価値があるサービスを提供できるようになります。

マネーツリーはイネイブラーとしてこれまで数多くのパートナーシップを結んできました。そこには、創業以来大切にしているプライバシーに対するポリシーがあります。

このブログでは、”プライバシーゴーグル”をかけて、企業と顧客のプライバシーを守りながらパートナーシップを組む際に考える点とは何かについて話していきたいと思います。

パートナーシップの現状

オープンAPI、銀行法改正や金融サービス仲介業など、この数年で日本の金融市場は一社のみでのサービス提供から、金融機関とフィンテック、または、フィンテックとフィンテックなどがパートナーシップを組んでサービス提供する形が増加傾向にあります。それは先述のブログでもあるように、お互いの強みを合わせることでサービスの高度化や早いサービスリリースを実現できるからです。

弊社のMoneytree LINKは、銀行やフィンテック企業など様々な企業に導入いただいています。フィンテックのクラウドキャスト様は導入の理由をこう述べています:

「Stapleでは、従業員の経費申請にかかる手間を省くため、クレジットカードや電子マネーの利用情報を、Moneytree LINKを通じて取得しています。お客さまにバリューを提供するため、Moneytree LINKはなくてはならない存在です。お客さまが利用している金融サービス毎のID/パスワードを、我々自身で取得・管理するのは非常に大変なこと。それを、マネーツリー一社と連携するだけで、様々なサービスの情報を取得できるようになるので、本当にありがたいです。」
ー代表取締役 星川 高志 氏(詳しくはStapleの導入事例をご覧ください)。

イノベーションを起こし続けるには、自分たちにない優れた技術を持つサービス事業者とのパートナーシップは不可欠です。しかし、技術面の合致だけでパートナーを選択すると短期的には成果になりますが、長期的に考えると企業の信頼や利益にも影響を及ぼす可能性があります。その理由はプライバシーの現状にあります。

プライバシーの現状

欧州のGDPR(一般データ保護規則)の施行から約3年、既に高額な罰金を課された事例が報告されており、今年の7月には欧州当局がAmazonに対し、7億4600万ユーロ(約970億円)の罰金を課しました。2018年にフランス当局がGoogleに対して課した5,000万ユーロ(約63億円)を上回り過去最高金額となったことは記憶に新しいと思います。(出典

このように、欧州で標準化されつつあるプライバシーを尊重する考え方や新たな規制は日本にも波及しつつあります。

例えば、昨年、日本で成立した改正個人情報保護法は、2021年後半から2022年前半までに施行される予定です。(個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」の閣議決定について

また、岸田新首相が示す3つの政策のうち、成長戦略の経済安全保障では経済産業省にDFFT (​​Data Free Flow with Trust) 専任大臣の設置を掲げていることから、日本でも自由で開かれたデータ流通とプライバシーを尊重するサービスがスタンダードになると思います。(出典

この流れは、個人情報を含むデータを取り扱う事業者にとっては追い風でもありますが、これまでのプライバシーの取り組みを覆されてしまう可能性を持つ、潜在的な脅威と言えるでしょう。

私はAppleの開発者向けのカンファレンス「WWDC」に毎年行っていましたが、7年ほど前のプライバシーの講演は私を含めて数人しかおらず、ガラガラでした。それがここ数年ではプライバシーの講演は毎回満席です。このように国の規制や政策の後押しだけでなく、サービス事業者である企業の関心自体も高まっています。先進している企業にとって、会社のプライバシーに対するアプローチは、ブランド・エクイティを高め、競争上の優位性の源泉となっています。

パートナーシップを組む際に考えるべきポイント

おそらく、サービスを提供する多くの事業者はすでにプライバシーの重要さを理解していて、個人情報保護方針と利用規約を明示し、利用者からきちんと同意を取得した上でデータを収集していると思います。

データ分析や利活用による顧客体験の向上は、多くのサービス事業者が取り組んでいますが、果たして利用者は分析や利活用の「二次利用・三次利用」まで同意してデータの収集を承諾しているのでしょうか。また、サービス事業者は、それらを利用規約に明示できているのでしょうか。

もし、パートナーシップを結んだサービス事業者が、利用者のプライバシーについての理解が進んでいない企業だった場合、GDPR違反の罰金のような出来事が起こる可能性もあります。そうなった場合、サービスを提供する企業として利用者への謝罪や説明、サービス利用における同意・承諾の取り直しなども必要となりますし、信頼を失った状態では、加速したいビジネスのアクセルを緩めたり、時にはブレーキをかける選択をしなければならないでしょう。

私は、創業してから今まで、何度も「データを提供して欲しい」と言われたことがありますが、収入源がない時でも全て断ってきました。

なぜなら、利用規約に明記せず、サービス利用者の同意と承諾を得ていないデータ提供は決して行わない考えだからです。データの利活用に関しても、匿名化しプライバシーを守ることができる方法を見つけるまでは考えられませんでした。このプライバシーの方針を曲げるくらいなら、会社を閉める決意をしていました。

マネーツリーではスタンダードな「あなたのデータはあなたのもの」という利用者が自身のデータの利用権限をコントロールする考えは、世界で標準化されるであろう今後のプライバシーの「あるべき姿」と合致していると考えています。

マネーツリーでは、プライバシーを尊重したサービス設計やパートナーシップはプライバシー・バイ・デザイン (PbD: Privacy by Design) の7つの原則に則って判断しており、以下の基本原則に賛同してくれる企業様とパートナーシップを結んできました。

PbD: Privacy by Designの基本原則

  1. 事後的ではなく、事前的;救済的でなく予防的
  2. 初期設定としてのプライバシー
  3. デザインに組み込まれるプライバシー
  4. 全機能的—ゼロサムではなく、ポジティブサム
  5. 最初から最後までのセキュリティ—すべてのライフサイクルを保護
  6. 可視性と透明性—公開の維持
  7. 利用者のプライバシーの尊重—利用者中心主義を維持する

(プライバシーバイデザインの7つの原則

技術力だけを見るのではなく、自分たちの会社の哲学や世界観に沿ったサービス事業者とパートナーシップを組むことが、長期的に見れば有益と言えるでしょう。

マネーツリーとパートナーシップを組むといい理由

ここまで、プライバシーを尊重する重要さを語りましたが、個人情報保護にセンシティブになりすぎるとイノベーションを妨げたり、利用者がサービスを使い始めるまでの利便性が失われることもあります。ここは難しいですが、バランスが重要です。

マネーツリーでは、データプラットフォームを提供するだけでなく、オンボーディングプロセスも一緒に提供しています。「いつ・どこで・誰に・何の」データを共有するか、サービス事業者から説明を受け、納得してデータ共有を承諾できる連携画面も一体化しているので、利用者は摩擦の少ない手順でサービスの利用を開始できます。これにより、マネーツリーが今まで培ってきたサービス利用者がコントロールできるデータ共有と、より心地よいオンボーディングプロセスをパートナー企業様やクライアント企業様のサービスでも実現していただくことができます。

マネーツリーが提供するオンボーディングプロセスの流れ

Moneytreeが提供する登録認証フロー

オンボーディングプロセスに関しては、現在のプロセスよりもっとスムーズで摩擦の少ない手順を開発しており、既に一部のクライアント様にご利用いただいています。将来的には、新しいオンボーディングプロセスを全てのクライアント様にご提供したいと思っています。

日本のビジネスシーンでは多くのパートナーシップにより素晴らしい事業が誕生してきましたが、金融業界においてはオープンバンキング化でさらに活発になり、金融機関とフィンテック企業がパートナーとなる機会が増え、さまざまなイノベーションが起こっています。

今後は個人のプライバシーを重んじないサービス設計は時代に最適化されず、ビジネスの成長を減速させるでしょう。

金融データで新しい事業を検討しており、プライバシーを尊重したオンボーディングプロセスについてもっと知りたい事業者様や、パートナーシップを検討している事業者様がいらっしゃいましたら、ぜひ多くパートナーシップを組んだ経験のある私たちにご相談ください。

プライバシーリテラシー向上の一助となるべく、Privacy by Designに基づいた金融データプラットフォーム「Moneytree LINK」や資産管理サービス「Moneytree 」の提供のほか、定期的にこの「プライバシーゴーグル」ブログシリーズでプライバシーについて発信していきます。

ゴーグルを身につけるように、プライバシー重視の視点から日本市場に役立つプライバシーに関する情報を公開していく予定ですので、興味のある方はニュースレターにご登録いただき、今後の情報をどうぞお見逃しなく。

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プライバシーゴーゴルを読む

第一回:ニューノーマルでのプライバシーを尊重する施策

第二回:iOS上でのアプリ市場を変えるATTとは

筆者プロフィール

CEO: ポール チャップマン

マネーツリー株式会社の創業メンバーであり、代表取締役。2000年にSaaSスタートアップ「cvMail」を設立後、Thomson Reutersに売却。その後en world JapanでIT部長を勤め、2009年よりアプリ制作に着手。2012年にマネーツリー株式会社を設立、翌年より個人資産管理サービス「Moneytree」の提供を開始。日本と母国オーストラリアにおける金融データポータビリティーのビジョンの展開にも取り組む。好きな言葉は「七転び八起き」で、趣味ははエクササイズや子供との時間。

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