ブログシリーズ「What is ?」フィンテック編では、マネーツリーのエンジニアが日本市場でのアプリ開発やフィンテックの基礎知識を紹介していきます。(第一回 アカウントアグリゲーションとAPIについて)
今回登場するのは、インテグレーションエンジニアのヌイエン・ディエブ・フォーン。メガバンク、地方銀行、大手会計ソフト会社などと、金融インフラプラットフォーム「Moneytree LINK」との連携を支援するのが彼女の役割。面談段階から参画し、Moneytree LINKのインテグレーション案件のスケジューリング、プロジェクト実行そしてサポートまでを担当しています。
それでは、近年金融業界でホットトピックとなっている「参照系API」と「更新系API」について、お話し致します。
APIとは「Application Programming Interface」の略です。異なる複数のアプリケーションを繋がって、開発するためのツールです。簡単に説明すると、電話線のようにアプリケーション同士をつなぎ、データをやり取りするための仕組みです。(APIについて、詳しくは第一回のブログにて)APIはフィンテックイノベーションの土台であり、様々な新しいサービスを生み出す、要の技術です。
では、金融サービスのAPIを語る際に頻出の、参照系APIと更新系APIとは、一体何なのでしょうか。
参照系APIとは、データを取得するためのAPIのことです。利用者は、参照系APIを公開している会社のデータを、その会社のウェブサイトや基幹システムとは別のアプリケーション上で見られるようになります。公開する側は、データベースのすべて、もしくは限られた種類のデータのみ、閲覧権限を与えることが可能です。個人資産管理サービス「Moneytree」をはじめとする家計簿アプリなどの第三者サービス上で、銀行の残高や、クレジットカードの取引明細を見られるようになります。
一方、更新系APIとは、データを更新するためのAPIのことです。データを新しく作ったり、アップデートしたり、消去したりといったことが、更新系APIを公開している会社のウェブサイトを経由せずとも、別のアプリケーション上から実行できるようになります。例えば、「Moneytree」などの第三者サービス上から、銀行振込やキャッシング、クレジットカードのリボ変更などの取引ができるようになります。
参照系APIと更新系APIは、技術的に似ており、同じシステムであればセキュリティレベルも同等です。そのため、どちらも技術的な実現可能性は同じです。しかし、第三者サービス上でデータを更新できる更新系APIは、コンプライアンスの関係などから、実現難易度が上がってしまうのが現実です。それを乗り越えて更新系APIを実装すれば、更に大きなイノベーションを起こすことが可能になります。
ここからは、更新系APIを使うことで、どんなイノベーションが期待できるのか、ご紹介していきます。
第三者サービス上での振込が可能に。オンラインで定期預金の口座開設や、追加の融資申込、貸切の契約手続が可能に。
明細の取込と消込が自動でできるように。
第三者サービス上で株の売買が可能に。
自動的に銀行口座から証券アカウントへ送金をして運用が定期的に積み立てる
オンラインでリアルタイムの明細情報を使った契約手続が可能に。
ライフイベントの変化が起こった際に 例:「配偶者の有無」の変更で保険か住宅ローンサービスの提案が可能に。
APIを活用するには、参照系APIと更新系APIの組み合わせが重要です。つまり、参照系でデータを見て、更新系でアクションをおこすのです。例えば、参照系APIで資産残高を確認した後、更新系APIでお金を振り込んだり、クレジットカードのリボ変更をしたりなどです。
APIを利用したイノベーション例として、ある企業(A銀行)で住所変更手続きをした際、他の企業(B保険)の住所情報も自動的に変更される、というものが挙げられます。この例ではA銀行の参照系APIとB保険の更新系APIを活用します。具体的な仕組みを、順を追って見ていきましょう。
このように、参照系APIと更新系APIをうまく組み合わせれば、煩雑な手続きも非常に楽になります。
ここから更に踏み込んだAPI活用方法として、変更後の住所情報に基づいたマーケティングも可能になります。(例:引っ越し先が高級住宅街だった場合、ローンの提案をするなど)
これまで見てきたように、APIの活用には参照系API・更新系API両方の存在が欠かせません。しかし、マネーツリーのMoneytree LINKの最高責任者、マーク マクダッドは、更新系APIの実現について、「様々な課題があり、非常に時間がかかるのではないか」と危惧しています。
第一に、APIの仕様書やドキュメントが企業やベンダーによって全く異なるという問題があります。APIにはOAS3(Open API Spec 3.0)という世界標準のデータのフォーマットが存在するものの、日本ではまだあまり浸透していません。仕様書はExcelファイルやテキストファイルに保存されたり、自社のウェブ上に掲載されたりと、形式もバラバラな上に、記述方法も全く異なるのです。そのため、企業ごとにAPIの仕様を読み解くのに非常に時間がかかってしまいます。
また、APIの開発がベンダー任せになってしまっているというのも、問題の一つです。すべてベンダーに依頼して対応してもらわねばならないため、何か技術的な問題が発生しても、コストの問題から後回しにされてしまいがちなのです。マネーツリーとしてはスピーディなAPI連携を実現するため、世界標準であるOAS3への切り替えを各金融機関様へお願いしています。しかし、その書き換えにすらベンダーの工数がかかってしまため、なかなか標準化も進まない状況です。(OAS3についてはこちらのブログで)
今回は参照系APIと更新系APIについてご説明しました。この2つのAPIを正しい形で記述し、組み合わせることによって、様々な新しいサービスを生み出すチャンスが広がります。
マネーツリーは、APIのエキスパートです。お客さまそれぞれにカスタマイズした新鮮なご提案ができますので、APIについて何か気になることがありましたら、ぜひともご相談ください。
マネーツリー のインテグレーションエンジニアのヌイエン・ディエブ・フォーン。メガバンク、地方銀行、大手会計ソフト会社などと、金融インフラプラットフォーム「Moneytree LINK」との連携を支援するのが彼女の役割。面談段階から参画し、Moneytree LINKのインテグレーション案件のスケジューリング、プロジェクト実行そしてサポートまでを担当しています。
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