即時払いができるデビットカードが日本に登場してからしばらく経つ。10月から消費税増税に伴い、キャッシュレス決済でのポイント還元が始まる今年、Mastercardも日本でデビットカードの提供を開始した。今回、Moneytreeでは消費生活ジャーナリスト岩田昭男氏と共に、Mastercard 副社長 営業統括責任者 前田裕弘氏にデビットカードの利点と今後について話を聞いた。
岩田先生:今年、Mastercardはデビットカードに参入しました。すでにJCBやVISAがブランドデビットを提供していますが、Mastercard®のデビットカードはどのようなものでしょうか?
Mastercard: 現在、住信SBIネット銀行様と岡山県のトマト銀行様からMastercardのデビットカードを発行しています。もちろん、地銀やネット銀行にこだわってるのではなく、日本のキャッシュレスを推進するにあたり、適切な商品ラインアップを拡充していく中で、このような商品展開となりました。
岩田先生:JCBやVISAのデビットカードがある中、Mastercardの強みは何でしょうか?
Mastercard:具体的な数字などは公開していませんが、第三者機関の調査結果(出典:2018 Nilson Report) によると、4,720万か所で取り扱いがあり、世界で最も多くの場所で使えるのがMastercardであることとなります。
一般のお客様への体験という面においては、Mastercardが提供する機能もさることながら、イシュア(発行金融機関)が提供している機能も関わってきます。われわれ国際ブランドは、イシュアがより良い体験をカード会員様に提供できるようにサポートし、イシュアにとってメリットのある提案ができるよう注力しています。イシュアに当社のノウハウとベストプラクティスを提供し、イシュアが、カード会員様にとって最適な体験を提供することで差別化していく考えです。
岩田先生:先日、SBIの方に、住信SBIネット銀行が発行している「ミライノ デビット PLATINUM(Mastercard)」について話を聞きました。最初はデビットでプラチナカードを出すのは不安だったけれど、思った以上に出ているそうです。
Mastercard: 住信SBIネット銀行様には今までない、新しいものに挑戦していただいたことは幸運だと思っています。「ミライノ デビット PLATINUM(Mastercard)」に付随するサービスは弊社がグローバルで契約したものを提供しています。想定以上に発行されているというのは嬉しい限りです。
富裕層の中にはクレジットカードの与信枠では全ての支払いの金額に満たないという人もいらっしゃるようです。その点、デビットカードは銀行口座に直結しているため、限度額が口座残高となります。また、利用履歴がわかる点に関してはデビットもクレジットカードと一緒ですが、デビットカードの利点は、あといくら使えるかがすぐにわかることです。そのため予算管理も自然にできます。「ミライノ デビット PLATINUM(Mastercard)」ではそうしたメリットに加え、カードに付随するポイント還元の率やサービスを含め、総合的に「これは良い」と思っていただける商品になっているのではないかと思います。
ただ、われわれとしては、デビットカードはクレジットカードのシェアを取るものではなく、あくまでも現金を代替するサービスとして考えています。
Moneytree: 日本では現金を使う方が多いですが、そういう点ではデビットカードが一番浸透しやすいのではないかと思います。
Mastercard: そうですね、デビットカードは16歳から作ることができるので、使いやすく、さらにプリペイドカードには年齢制限もありません。世の中の価値観が代わってきており、クレジットカードだけではカバーしきれない層が出てきています。実際、ミレ二アル世代からは可処分所得が少ないときにあといくら使えるかがわかるのは非常に便利であるという声も多く聞いています。
ただ、われわれは必ずしも若年層向けに特化するというわけでもありません。デビットは全年齢層の方に使っていただけるカードだと思っています。何らかの理由でクレジットを使っていない方々にもデビットは刺さるんじゃないかなと思います。
岩田先生:デビットカードのどのようなところが便利だと思いますか。
Mastercard: 人にもよると思いますが、まずはリアルタイムに残高がいくらかが分かる点です。残高が足りないようであれば増やすことができますし、少ない残高の中でやりくりをすることもできる。そこはお客さま次第ではありますが、選択の幅が広がります。われわれはそうした新たな選択肢をさまざまな消費者の皆様に向けてデビットカードで提供したいと思っています。
また、お金の管理がしやすいことも利点と言えます。みんながいつかやらなければならないと思っている自身のお金に関する管理は、実際にやろうとすると面倒くささを感じます。Moneytree LINKのようなAPI連携されたスマホのアプリが自動で家計簿をつけてくれるようなサービスは、消費者の皆様に喜んでいただけるのではないかなと思います。
それらの利点を考えると、デビットカードが普及するのは、時間の問題ではないでしょうか。Mastercardをはじめ、VISA やJCBでもデビットを出しているので、徐々に浸透していくでしょう。発行金融機関も消費者の皆様にご使用いただくためにデビットカードを発行しているので、そのための啓蒙活動を行なっています。ある地点から一気に広がると予測しており、ゆくゆくは、人々が最初に作るペイメントカードがデビットカードになってもおかしくないと思っております。
Moneytree: そうですね、デビットカード以外にも金融では進化が多いですよね。
Mastercard: 非常にダイナミックに業界は変わろうとしています。クレジットカードもデビットカードもそうですが、プラスチックのカードを含む電子決済というのは一番古くて新しいフィンテックと言えるかもしれません。
テクノロジー的にイノベーションの起きる余地がなさそうな分野で、テクノロジーの進化が起きるというのは、やっぱり面白いなと思います。いろんな形でイノベーションをリードする企業が、入れ替わり立ち代わり出てきています。Moneytreeさんも今まで誰もやってこなかったことをやっていますね。
Moneytreeのアプリでは、ほぼリアルタイムで口座の残高や利用履歴がわかり、閲覧性に優れています。消費者の皆様は銀行口座をいくつも持っているので便利です。サービス利用開始時に複数の口座に対するパスワードを入力することを納得してもらうことは、難しい部分だとは思います。ですが、それさえ越えてしまえば、このサービスの便利さがわかります。そして、一度便利なものに触れてしまうと、なかなかそのサービスがなかった時は戻れません。
Moneytree:日本のフィンテックもここ数年で大きく変わってきているのを感じています。Moneytree以外にもいくつか資産管理サービスが出て来て、電子決済等代行業の登録も始まりました。国がサポートしてくれるようになって、本当に状況は変わるものなんだなと思っています。
Mastercard: 来年から5Gの世界が来て、たとえば、オンデマンドのテレビ放送が当たり前になり、それから色々なサービスがサブスクリプションモデルになっていく。そこにカードがどうイノベーションを起こして絡んでいくのか、私たちも考えているところです。まだ見たことのない世界なので想像がつかないのですが、ますますシームレスに、あまり意識しないで支払いができる時代になってくるのかなと思っています。
認証についても、今はクレジットカードでは暗証番号を使ってますが、個人認証は生体認証に変わっていくでしょう。個人情報を使っていくのが当たり前になる中で、個人情報がどう適切に管理され、使われていくのかというのが今後、大事になってくると思います。
岩田昭男 消費生活ジャーナリスト。1952年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。同大学院修士課程修了後、月刊誌記者などを経て独立。流通、情報通信、金融分野を中心に活動する。 2018年7月には、30年になるクレジットカード研究と、その間のキャッシュとの戦いを描いた新書「キャッシュレスで得する! お金の新常識」(青春出版社)も出版。
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