こんにちは、マネーツリーのマークマクダッドです。2018年6月に施行された改正銀行法によって、各金融機関にはオープンAPIの努力義務が課され、参照系APIによるサービス連携の契約締結期限は2020年5月末とされました。
現状、金融庁の発表によると業界全体では、電子決済等代行業者(電代業者)の登録を受けている企業のうち1社以上と契約締結済みの銀行は約40%の57行、契約交渉中を含めると約90%の122行(2019年11月時点)とされており、目標数を80%と定める中、状況は思うように進んでいないように見られます。
マネーツリーと連携している金融機関においても、銀行API利用契約を締結済みの金融機関は34行(2020年2月現在)と、同様です。
これをふまえ、2019年12月に金融庁は、契約締結が間に合わない場合の影響を考慮し、スクレイピング契約も容認すると決定しました。これにより、当面において実質上の期限はなくなり、金融機関や我々のようなFintech企業も、ただ期限内に対応するのを目的にするだけでなく未来のシナジーを見据えた、本来の意味でのオープンAPIへの対応が可能になったのではないでしょうか。
金融オープンAPIの対応がなかなか進まないのにはいくつか原因がありますが、一番のネックとなっているのは、業界全体で、オープンAPIの先にある未来が具体的に描ききれていないことです。実際、「開発費をかけてまで、銀行APIを公開する意義がわからない」「API連携しても、電代業者のサービスが充実するだけなのでは?」との声をよく聞きます。
オープンAPIの先にある未来とは?
まず、分かりやすいのはAPI連携による「業務の効率化」でしょう。社内システム間の連携でAPIを利用することにより社内でのデータ活用が進み、煩雑な顧客管理業務が簡略化されたり、外部システムとの連携により、例えば、住所変更の一括変更といったことが実現し、各種手続きのコストや時間を削減できたりするのではないでしょうか。
次に、「利用者保護」の観点です。不適切なアクセス手段の削減や、システム変更時におけるデータ提供先への影響を最小化し、セキュアで安定した稼働を維持することができます。
そして、更に大きなメリットとして、API接続した先にある「オープンイノベーション」です。APIにより自行のデータと他社サービスを組み合わせて、新たなビジネスの可能性を広げることができます。
以前「変わる銀行法シリーズ 最終回 : マークに聞くオープンAPIの重要性」ブログでもお話した通り、「消費者が望むサービスを提供すれば、人は集まる」のです。
スクレイピング容認により、猶予ができたとは言え、いずれオープンAPIへの対応に迫られることは間違いありません。しかしながら、金融機関の規模や、各行が持つ優先順位により、その多くが、API開発にかかるコスト負担やシステム・セキュリティーの担保、仕様定義など、ふみきれない様々な課題を抱えていることでしょう。
それらを乗り越えた上でスムーズ オープンAPIを完了するには、これから挙げる3つのポイントが重要となります。
1. 様々なAPI連携先を想像し、その先にあるビジネスからのリターンを想定する
よく耳にするのが、「API開発にかかるコストをどこで回収できるのかわからない」というものです。何のためのオープンAPIなのか腑に落ちず、とりあえず短期的に回収しようとする結果、本来シナジーを生むパートナーとなるべきFintech企業から回収することとなり、その結果経済的に体力のないFintech企業が難色を示し先に進まないという構図が見受けられます。これに関して我々Fintech側から言えるのは、「一緒に考えましょう」ということです。シナジーはお互いの知見を持ち寄って歩み寄って、生まれるものだと思っています。ぜひ当社を始めとした様々な連携企業と相談してみてほしい。と思っています。またコスト削減については、いくつか具体案がありますので、ぜひご相談いただければと思います。
2. セキュリティのチェックリストの審査を早く終わらせる
FISC(金融情報システムセンター)から、ひな型となる「API接続チェックリスト」も公開されてはいますが、更に独自の項目も必要となるため、金融機関と我々の手続きにかかる負担は少なくありません。この点は、第三者認証機関の審査を利用して、簡素化する方法もあります。また、マネーツリーは電代業者として厳しい審査を通過していますし、金融業界のデータアグリゲーションを専門に8年間の実績と銀行APIへの深い知見があります。外部チェックなどの監査も受けており、安心してAPI連携していただけるのではないでしょうか。
3. 「時間もコスト」と認識する
金融API契約の際、金融機関とAPI接続先の間にて交わされる契約書ですが、この契約書の締結に時間がかかる場合が多くあります。全銀協が「銀行法に基づくAPI利用契約の条文例」を取りまとめて公開していますが、この標準的な条文の他に、各行特約条文を盛り込む場合があります。その項目について双方の認識の相違により契約に時間を要してしまうのです。その条文は必須か、サービス連携開発の途中で定義しても良い内容ではないかを精査し、必要最低限の条文で契約を締結することにより浮いた時間=コストで、自社のサービスを高度化させることに充てるほうが、より価値のあるコストの使い方ではないかと考えています。
先に述べたように、オープンAPIは、長期的なビジョンのもとに取り組めば大きなメリットが得られるはずです。始められるところから一緒に始めたい。それが私たちののスタンスです。
最後に、銀行APIを公開するメリットについて、改めて強調したいと思います。
何より、銀行APIこそが、これから新しいサービスを作り、より良いサービスをお客さまに提供する最大のドライバーになるということです。銀行APIを通じて連携した外部サービスの顧客が自行の顧客にもなるなど、ビジネスチャンスも大きく広がります。様々なサービスとAPIでつながることで、新たなビジネスや企業間のエコシステムも生まれ、ネオバンクやBaaSなど新サービスを持って金融市場に参入してくる企業とも時には手を組み、更にビジネス伸ばすという可能性も生まれます(APIエコノミー)。
マネーツリーのお客さまの中には、「まずはAPIを公開し利用してもらうこと」を優先し、契約からAPI連携までを3ヶ月で実現できた金融機関もいらっしゃいます。
何から始めたら良いかわからないという場合でも、ぜひ一度お問い合わせいただけたら、幸いです。最適な手段とAPIを最大限活かすためのアイディアを一緒に考えていきたいと思っています。
マネーツリー株式会社の創業メンバーであり、金融インフラサービス「Moneytree LINK」の責任者、FinTech協会の理事としてAPI・セキュリティ分科会の立ち上げを担当。 アメリカの大学卒業後来日し、IT関連の法人営業としてキャリアをスタート。趣味はシステムとWeb開発でスマホの当初にサラリーマンを辞め、マネーツリーの創業メンバーとして参画、2012年にマネーツリーを設立し、2013年に個人資産管理サービス Moneytreeをリリース。Moneytreeの基盤であり国内2,700社以上の銀行口座(個人、法人)、クレジットカード、電子マネー、マイル・ ポイントカード、証券口座の金融データをAPIとして提供する「Moneytree LINK」の最高責任者。
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