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AIとUI/UXで、よりセキュアでワクワクする金融アプリを
銀行

AIとUI/UXで、よりセキュアでワクワクする金融アプリを

マネーツリー編集部
2017
10
06

2017年6月29日に開催したマネーツリー主催イベント「API、AIで変えていく地方銀行のデジタルバンキング」。最後は第3部のパネルディスカッションの様子をお伝えします。「API、AIは金融業界の何を変えていくのか」と題し、地方銀行にシステムを提供する側の企業の皆さんにご登壇頂き、フィンテックの現状や今後について語って頂きました。ご登壇頂いたのは、株式会社NTTデータ 第四金融事業本部企画部の村上隆氏、フェンリル株式会社エグゼクティブコンサルタントの島内広史氏、HEROZ株式会社 開発部長の井口圭一氏。マネーツリーからも第1部に続き、マーク・マクダッドが参加しました。

金融機関目線のIT化から、ユーザー目線のフィンテックへ

初めに自己紹介と、各社のフィンテックへの取り組みについて紹介して頂きました。銀行向けに基幹システムを提供しているNTTデータの村上氏は、金融のフロントエンドのチャネルやデジタル系の企画をしています。バンキングアプリのサービスも手がけ、マネーツリーとも提携して開発を行っています。

金融業界のテクノロジーに長く携わってきた村上氏は、フィンテックは特殊なものではなく正常な進化だとし、金融業界とテクノロジーの歴史について説明してくれました。旧来、銀行のオンライン化・システム化は、銀行業務を効率化して、いかにコストを下げるかにフォーカスしていたそう。インターネットバンキングも、法律や省庁からの通達からスタートした部分もあり、利用者目線でなく提供者側の理屈で進んできた時代が長かったとのこと。ところが最近はリーマンショック以降現れたフィンテックの流れに乗り、利用者目線に転換してきているそうです。「お客さんが求めることに真摯に取り組み、フィンテック企業とも協力して、本当に役立つ金融サービスを作っていきたい。」と意気込みを語りました。

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 向かって左 : 株式会社NTTデータ 第四金融事業本部企画部の村上隆氏

異業界で培った技術やノウハウを生かして、新しいサービスを

iPhone用アプリ開発にいち早く参入し、UI/UXにこだわった開発を続けるフェンリルの島内氏は、今年4月に新しくコンサルティング部隊を立ち上げました。これは企業のアプリが「とりあえず作る」というフェーズから、リニューアルや、収益を上げるというフェーズに移ってきているため。島内氏は、この一年ほど金融関係の案件が増え、フィンテックの流れを肌で感じていると話しました。最近の金融系アプリのトレンドも、口座情報を見ることが出来る参照系APIのみに対応して作られたものを、振込など口座情報を外部から更新することができる更新系APIに対応するようアップデートしていくフェーズに移行してきているとのことです。

異業界で培ってきたノウハウを生かし、得意とするUI/UX (ユーザーインターフェースとユーザーエクスペリエンス)を武器に金融業界でもサービスを提供していきたいと述べました。

現役プロ棋士にも勝利した世界最強の将棋AIの開発者も所属する、AIのスタートアップ企業HEROZは、昨年株価予測のAIを作って金融業界に参入してきたばかり。「将棋で培ったAI技術を他の分野でも生かしていこうと思った時、AIが活躍する余地が一番大きいのは金融業界だと感じ、乗り出しました。」(井口氏)

将棋という異業界で培った技術はどの程度金融業界で生かされるのか、という問いかけに対し、「将棋でも金融業界でも、機械学習などAIの個別の技術は共通です。」と答え、ある問題を解決する際に、どのAI技術をどう組み合わせて使えばよいのかといったノウハウは、金融業界でも十分応用できるとアピールしました。実際、与信判断のAIでは、人間が作った既存のモデルよりも成果を上げているそうです。

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HEROZ株式会社 開発部長の井口圭一氏

村上氏も、技術や考え方といったものは時代や業種を越えて再構築され、最新のサービスとして利用され得ると述べました。金融機関における大きなイノベーションでいうと、ATMのような業務の機械化とインターネット利用の二つがあげられるそうです。そのインターネットも、これまでブラウザが中心であったのがスマホへとシフトし、今ではモバイルアプリが当たり前。プレイヤーもマイクロソフト一強からアップルやグーグルの時代に変化し、今までと違うソリューションが次々と出てきています。「環境や利用者のニーズも変わるので、テクノロジーをその時代にあった金融サービスに仕立てていくのが重要なポイントだと思います。」(村上氏)とのコメントには、モデレーターの大谷氏も同意し、例えばアップルが行ってきた革新も、使っている技術自体は決して新しいものや独自のものでなくとも、それらを上手く組み合わせることで真新しいものに見せてきた、と述べました。そして、話はマネーツリーが海外にも進出したことに及びました。

本イベント開催の一週間ほど前、マネーツリーは日系フィンテック企業として初めてオーストラリア市場へ進出し、Moneytreeアプリのサービスを開始しました。マネーツリーのマクダットは、オーストラリアと日本の類似点として、金融業界が成熟していることや、メガバンクや信用金庫のような金融機関の存在などを挙げました。「技術そのものを輸出するのではなく、マネーツリーが日本で培ってきた情報共有に対する考え方を輸出しています。著しく新しい技術ではなく、色々な技術を合わせて、使いやすい形で提供していきます。」(マクダット)というのも、先に村上氏が述べた「環境や利用者のニーズに合わせたサービスの提供」に通じるところがありそうです。                                            

セキュリティの不安は既存技術とAIで払拭できる

フィンテックに伴うデメリットとして、セキュリティ面が気になる方も多いのではないでしょうか。フェンリルの島内氏は、NTTデータなどが今まで培ってきたセキュリティ技術と併せて新しい技術も取り入れ、セキュリティ面は担保しつつも、使い勝手の良いものを作るのがフィンテックの開発において重要なポイントだと述べました。

一方HEROZの井口氏は不正アクセスに関して、「AIは過去の事例をベースに学習し、次の判断を行います。過去の事例の中に「これは不正」、「これは正規のアクセス」というのがあれば、そこから学習して、新しい不正を見つけてシャットアウトすることも可能です。」と述べ、AIがセキュリティ面でのデメリットをカバーできるとアピールしました。

金融機関と協力し「お客さんがワクワクする未来」を実現したい

フィンテックの未来について、各社がどう考えているのかも伺いました。

フェンリルの島内氏は金融アプリを作る際に心がけていることは、「お客さんをワクワクさせること」だと語りました。「金利が低く、銀行に預けておくだけではお金が増えない時代。運用サービスもたくさんあるものの、お客さんは情報がありすぎてよく分からず、銀行への期待値が下がってしまっているように感じます。Webアドバイザーのような、AIが自分の求める運用をしてくれて資産が増えるような、そんなお客さんがワクワク・期待できるアプリを作っていくのが大事だと思います。その際、UI/UXで使い勝手が良く、誰にでも分かる、というところにこだわるのも重要です。」(島内氏)

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 向かって左 :フェンリル株式会社エグゼクティブコンサルタントの島内広史氏 とマーク マクダット

HEROZの井口氏は株価予測やセキュリティ以外にもAIが活躍する余地は大いにあると述べました。「私達が金融向けのAIとして最初に参入したのは株価の予測でした。株価は過去の数値が全てパブリックなので割と取り組みやすかったからです。銀行が蓄積している、外には出せない個人の情報も、解析していくとより細かい個人の志向や、この人にはこれをおすすめした方がいいのではないか、というのが分かると思います。」(井口氏)

NTTデータの村上氏は、AIや音声認識技術は大いに活用できるとし、「入力補助や、過去のクセを学習して、「マークさんに振り込んで」と言うだけで、いつものマークさんに送金する、といったことができそう。」と話しました。また、「APIはまだスタートしたばかり。ただオープンにしただけなので、それをどう使うのか、金融機関さんやフィンテック企業さんと一緒に考えていきたいです。」と、これからはバックエンドだけでなく、更に上のレイヤーまで共に考えていく姿勢も表明しました。

3社とも、銀行や他のフィンテック企業と一丸となって、APIやAIを利用した利用者目線の金融アプリケーションを作っていきたいと、意欲を見せました。マネーツリーのマクダットも、「本日登壇された3企業は、それぞれ金融会社に提案できる内容を持っていらっしゃいます。ただオーダーするだけでなく、是非一緒に勉強し、ソリューションを作っていって頂きたい。」とセッションを締めくくりました。

マネーツリー編集部

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