前編では、会計ソフトの利用状況、税制改正による青色申告控除額の変更をきっかけとするクラウド会計の需要増加の見通しや、クラウド型とインストール型の会計ソフト販売実績の内訳についてお話ししました。後編では、会計ソフトの今後の状況、そして会計ソフトと金融データをつなぐMoneytree LINKについて解説いたします。
1998年に施行された電子帳簿保存法(正式には「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」という)は、その後何度かの改正を経て、2020年4月の改正により経費精算ができる電子データの活用が促進され、経費精算のデジタル化が一層進展することになりました。
改正以前は経費精算の場合、領収書を受領した本人がスマートフォンなどを利用して領収証を電子化し、受領日翌日から3日以内に電子ファイルにタイムスタンプを押すことでデジタルデータを紙の領収書の代わりとしていました。
しかし、領収証を紙に貼る代わりに写真を撮ること自体に手間がかかり、しかも3日以内に処理し続けるのはかなりの負担でした。おまけにこのデータを受け取った経理部は、これらの日付や金額、支払先などをチェックして会計ソフトに手入力し、それをダブル・トリプルチェックしていたため、その事務負担は決して軽いものではありませんでした。
しかし2020年の改正により、事前に指定したキャッシュレス決済を行えば、写真撮影や署名、そして3日間の期限もなくなり、クレジットカード決済の明細や交通系ICカード決済の明細、QRコード決済の明細などのデジタルデータを領収書の代わりとすることが認められるようになりました。
今回の電子帳簿保存法の改正により、デジタルデータを積極的に活用すれば企業の事務負担を大幅に減らすことが出来るようになりました。そのため、今後企業のキャッシュレス化が急速に進むことは間違いありません。
会計ソフトや自社の管理システムに入力すべき領収書などの原始資料がデジタル化されれば、あとは銀行口座やクレジットカード明細のデジタルデータを会計ソフトにつなぐことさえできれば、すべてを一瞬で処理することができるようになります。
これまで莫大な手間や時間がかかっていた経理事務の負担を減らし、スピーディーな経営判断ができるようにするために、今後はこのようなプラットフォームが搭載された会計ソフトに対するニーズが高まると思われます。
一般企業以上に会計ソフトを日々利用しているのが会計事務所です。会計事務所における日々の業務の中心は会計ソフトへの入力作業ですが、基本的には手入力のため1人がこなせる数には限界があります。
このように、会計事務所の売上高は人件費とワンセットになっており、売上高だけを伸ばすことはできません。さらに慢性的な人手不足のため、入力作業の負担は一般企業の比ではありません。
しかし今回の電子帳簿保存法の改正により顧客のデジタル化を進めれば、会計事務所が入力する必要がほとんどなくなり、また入力内容のチェック時間も圧倒的に短縮されることになります。
これが現実すれば会計事務所の利益率が圧倒的に改善されるため、一般企業以上に会計事務所では、銀行口座やクレジットカード明細のデジタルデータを取り込む機能を会計ソフトに求める声が大きくなります。
このように、金融関係のデジタルデータと会計ソフトを結ぶニーズを可能にするための金融データプラットフォームが、マネーツリーのMoneytree LINKです。
Moneytree LINKは国内約2,700社以上の
の取引明細を画一化されたフォーマットに統一・管理することができ、搭載されている人工知能エンジンによって90%を超える精度の自動仕分けを可能にしています。Moneytree LINKの詳しい内容に関しては、Moneytree LINKのサービス概要資料をご覧ください。
また、外部システムともシームレスに連携することができるため、会計ソフトはもちろんのこと、一般企業の管理システムなどとも連携が可能な上に、クラウドだけでなくオンプレミス型のシステムにも柔軟に連携することができます。
このMoneytree LINKは弥生会計とも連携しているため、弥生会計は今後より一層シェアを増やしていくものと思われます。
マネーツリーの歴史は、2012年に資産管理アプリのMoneytreeをリリースしたところから始まります。Moneytreeは、銀行口座やクレジットカード明細などを登録しておくと資産の管理を簡単に一元化することができるため、またたく間にユーザー数を増やしていきました。
また、2014年にMoneytree Work(経費精算) がリリースされ、その後のアップデートにより私用と経費の切り分けが自動的に判断できる機能が搭載されていることから、多くの個人事業主もMoneytreeのユーザーとなりました。
その頃会計ソフト最大手の弥生会計では、Moneytreeのユーザーである個人事業主のデータを、APIを通して弥生会計に取り込むことが検討されていました。これが成功すればユーザー側の入力処理が不要となり、利便性が大幅に向上するからです。
その結果、2015年に弥生会計側からのアプローチにより、弥生会計とMoneytreeの利用者が同意した場合に限りデータの共有を行うことが開始されました。
その結果、下図のようにMoneytree LINKで取り込んだ銀行やクレジットカード、電子マネーなどの明細データは弥生会計と連携され、自動仕訳により入力の手間を大幅に軽減することができるようになりました。
またオンライン会計ソフトのメリットを生かし、windowsやmacなどのOSに関係なくどちらのユーザーでも弥生会計を利用できるようになりました(詳しくは弥生会計の導入事例をご覧ください)。
Moneytree LINKはクラウド型やオンプレミス型に関係なく連携することができるため、これ以後は以下の会計ソフト・ERPでもMoneytree LINKが採用されるようになりました。
Moneytree LINKが多くの会計ソフトで採用された背景には、以下の3つの優位性があったからです。
会計ソフトとMoneytree LINKを連携することにより手入力が大幅に削減されるため、ユーザーの事務コストが大幅に削減され、かつ処理スピードの大幅アップも可能になります。
またソフトの開発者側にとっては、Moneytree LINKのLINK APIはクラウドはもちろんのことオンプレミス型とも柔軟に連携することができるため、会計ソフトはこれまでのシステムのままで、最新の技術を追加することができます。
このように、Moneytree LINKは会計ソフトのユーザーだけでなく、その開発者にとっても、ユーザビリティを高めることができます。
前述のとおり、会計ソフトは新規導入時にかなりの手間や時間を必要とするため、いったんそのソフトを利用し始めると、なかなか他ソフトへ切り替えるのが難しいという特徴があります。
先にシェアを押さえてしまえば、ユーザーの離脱率が低いだけに、長期的安定的にシェアを維持するためには、できるだけ早くソフトを開発し、リリースしなければなりません。
Moneytree LINKは既存の会計ソフト側に対して大幅なシステムの変更などの負担を強いることがないため、短い開発期間で最新機能を搭載した会計ソフトをリリースすることができます。
すでに多くの会計ソフトで採用されているため信頼性も高く、かつ一から開発するわけでないため、開発コストを大幅に下げることもできます。
会計ソフトをMoneytree LINKと連携させることにより、銀行口座やクレジットカード明細などの金融データを瞬時に集めることができるようになります。しかしこれはゴールではなく、単なる通過点に過ぎません。
Moneytree LINKは拡張性が大変高いため、将来国税庁がさまざまなデータを開放するようになれば、たとえば路線価図をもとに土地の相続税評価額を瞬時に算出することができるようになります。
そうなれば、経営者の個人資産はマネーツリーのアプリで管理し、会社の株式の評価額はMoneytree LINKと連携した会計ソフト側で行い、経営者の資産の相続税評価額をリアルタイムで瞬時に算出することができるようになります。
もちろんこれは単なる一例にすぎず、アイデア次第ではさまざまなサービスを生み出すことができる高い拡張性をMoneytree LINKは備えています。
電話にインターネットをつなげたiphoneが世界を変えたように、会計ソフトに何かをつなげれば新しいサービスが生まれ、やがては世界を変えるだけの力を持つ日が来るかもしれません。
Moneytree LINKの拡張性の高さは、それだけの能力と魅力を兼ね備えています。
なお、Moneytree LINKの詳しい内容に関しては、Moneytree LINKのサービス概要資料をご覧ください。
今後、マネーツリーのLINKブログからは、会計業界にまつわるニュースをフィンテック視点から発信予定です。ご興味がある方は、ぜひマネーツリーのニュースレターにご登録ください。月に一回最新のブログや導入事例などをメールでお送りします。
会計事務所に10年ほど勤務後、コンサルティング会社に10年ほど勤務。その後独立し、現在はM&Aや税務など 金融専門のライターとして多くのメディアで執筆中。 趣味はフランスのレストラン食べ歩きとカリフォルニアのワイナリー巡り。 なお、ライター名はプルーストの「失われた時を求めて」から拝借。
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